育休父さんの成長日誌

朝日新聞朝刊 家庭面 (毎週木曜)連載
脇田能宏担当分: 1997年10月2日〜1998年1月29日

199710/2主夫になった日
10/9名を贈る
10/16最後の出社日
10/23どっちが取る?
10/30ひなたぼっこ
11/6ウンチ
199711/13主夫の気持ち
11/20妻の一言
11/27いつもの一日
12/4子育ての報酬
12/11お呼び出し
12/18家事と子育て
199712/25保育園
19981/8どうして?
1/15住み慣れた街
1/22子育ての時間
1/29夫婦の道のり

【いつもの一日】

 五月十五日、今日は五時十五分に定時退社した。これなら夕食前に帰れる。妻は育児時間を取って六時ごろ保育園に迎えに行き、先に夕食の支度をしている。こういう日はのんびりできていい。そう思いながらマンションの階段を上がっていくと、何やら泣き声が聞こえてくる。
 「ただいま」と玄関をあけると、そこで上の広基が泣きじゃくっている。僕の顔を見て妻はほっとした様子だ。事情を聴くと、妻が先にエレベーターのボタンを押してしまっただけらしい。広基は三歳半。そんなたわいない理由で意固地になって一時間でも泣き続ける年ごろだ。今日は広基に付き合うか、と腹をくくる。十五分ほど向き合って、「パパと戻ってやり直す」ということで納得した。こんな時は人がかわるとうまくいく。まだしゃくりあげながら僕の手を握る広基を連れて、階段を下りてエレベーターで帰ってきた。妻が「ごはんだよ」と笑顔で迎える。広基にも笑顔が戻った。
 慌ただしく食事を終え、保育園から返ってきた洗濯物の下洗いしていると、広基が足元にまとわりついて甘えてくる。下の尚紀が一人だと泣くので「お兄ちゃんがいないとさびしいって」とおだてると、勇んで「いないいないばぁ」をしにいってくれる。
 その間に妻が食器を洗い終え、尚紀と入浴。洗濯物を洗濯機にほうり込み、次は僕と広基が入浴だ。ふろから出た広基は着替えをせずにもじもじしている。まだ甘えたい気分なのだ。
 歯を磨き終えると広基は絵本を持ってきた。ひざに乗せて読んでやるが、冒険の話が盛り上がるころ、九時になった。「続きはまた今度」という決まり文句で、絵本を二人で閉じた。子供部屋まで抱っこしていき、一曲歌っておやすみなさいをするのが最近のお決まり。今日のリクエストは「ころころたまご」だ。
 広基が寝たあとは夫婦のお茶の時間だ。今日は妻が大変だったので僕がお茶を入れる。我が家では、なんとなく「ねぎらう側」がお茶を入れることになっている。クッキーを出し、ミルクティーを注いで乾杯だ。妻は尚紀におっぱいをやり、僕は朝干した洗濯物をたたみながら、のんびり話ができる。今日も一日、お互いにお疲れさま。

(電機メーカーエンジニア) イラストを見る

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