Last updated : Jan. 20/05 

育時連メーリングリストで話題になった本


毎日かわされるメーリングリストで話題になった本を
紹介します。
 

小倉千加子著
『結婚の条件』

朝日新聞社 2003年

3人の方が感想を寄せています。

わきたさきこ
 経済的にはゆとりがあり安定していて、お金のためでなく自分で選んだクリエイティブで見栄えのよい仕事をしている。もちろん「子どもが帰宅しても手作りのおやつを食べさせ」られる程度にセーブして、…>>全文を読む

大越将良
 いまどきの女性の(特に彼女のカスタマーである女子大生)の心情を、キッパリと言い切っていく小気味よさはたまらない。多少毒もはいっていて、ピリッとしびれるし、ふんふんと思わずうなってしまう。これを読むと、…>>全文を読む

古川玲子
 小倉千加子の真骨頂は、ご自分は研究者というエリート職でありながら、 「エリートではない多数派の女性(学生・主婦)の現に立っている状況」をリアルに、時にはデフォルメしつつも共感的かつ断定的に描いて見せるところですが、…>>全文を読む


賀茂美則著
『家族革命前夜(イブ)』

集英社インターナショナル 2003年

 「家事分担という一点に『資源』と『権力』そして『イデオロギー』といった、家族をめぐる三つの根本的な要素が交錯している」家事分担について常々なんとなく思っていたことをこうやってズバリと整理され「おおおお、さすが先生の論は切れ味が違いますなぁ」と感嘆しきりでした。
 もうひとつ興味深かったのは、アメリカ人の「自由こそ何ものにも代えがたい価値」という信仰と、日本人の「拡大家族嗜好」(あくまで嗜好品としての)への指摘。ここはもうちょっと話をよく聞いてみたいエリアだなぁ。案外、三歳児神話 in JAPANにつながる水脈がある気がするんだけど。
 一章ごと独立した構成になっているので、家族論・ジェンダーについて初めてアプローチしたい方には特にお勧め。ただ、ときどき面白いところで章の最後に行き着いて話が終わってしまうので、授業終わった教授を廊下でとっつかまえて「先生、先程の話の続きですけど」と質問を投げかけたくなる後引き感があるのでした。

(コメント:古川 玲子)

信濃毎日新聞社編
『迷い道 子育ては、いま』

河出書房新社 2002年

 ちょっと立ち読みのつもりで本屋に入って、何気に手に取ったら止まらなくなって購入し、会社まで戻る電車の中で読みながら泣いてしまい、涙をふいて職場で仕事に戻り、夜、子供を寝かしつけてから続きを一気に読み終えました。昨年長野県の新聞に連載されたルポをまとめたもの。

(コメント:ひ)

アレン・S・ミラー/賀茂美則著
『日本 よいしがらみ 悪いしがらみ』

日本経済新聞社 2002年

 社会学に基づいた、一般読者向けの日本社会論です。1600円はお買得(?)ですので、買っていただければ一番ですが、図書館に買ってもらって下さってもOKですし、なんなら立ち読みでもいいので覗いてみて下さい。もちろん、次にお会いした時にお持ちいただければ著者のサインが入ります(笑)。

(コメント:著者)

 このところ何かと忙しかったのですが、やっと賀茂さんの新刊を読み終えました。確か、私が最初に読んだ社会学の本が、デュルケームの自殺論の入門書だったので、妙な懐かしさを覚えながら読んでいました。(※最近の日本の自殺による死亡数の増加について論じているところがあり、そこで『自殺論』とデュルケームの話が出てくる)
(コメント:か)

 面白かったです。一ヶ所だけ、「そうかな?」と感じたのは、結論部分(220ページ)に「今後10年のあいだに、経済が回復し、ベビーブーム世代が引退するようになれば、いま以上の就業機会が女性に提供されることになるだろう」という予測がありますが、ここで私は大胆にも(笑)異論を提出したい。
 女性は就業するチャンスが広がる前に、外国(特に中国)から来る労働者と競合させられると思います。だから、競争が厳しくなるだけで、就業の機会が拡大するまではいかないのでは?もちろん、景気の回復規模によりますが。
(コメント:も)

明橋大二 著『輝ける子』1万年堂出版

 精神科医として、中学のスクールカウンセラーとしてたくさんの子どもたちと接してきた著者は述べます。いじめ、不登校、拒食、子どもたちの異変に共通なのが自己評価の極端な低さだと。
 そして、今の子ども達の最大の特徴は、「自分が大人達に大事にされている存在だ」、「自分は生きている価値ある人間だ。」「自分は長所もちゃんと持っている自信ある存在だ」といった自己肯定感を持つ子どもがとても少ないと指摘します。
 原因は今の親の子どもへのかかわり方。少子化で子どもが少なく、子どもの悪いところしか見えなくなり、いい子を求めすぎ、つい過干渉・過保護になりがちだから。きっと読者は思い当たることもあるはず。そしてどんなことに留意すべきかが語られます。
 きっと多くの読者がハッっと我に返るはずです。字が大きく、大事なところはカラーで網掛け・太字になっていて、とても読みやすいのも特徴です。

明橋大二 著『思春期にがんばってる子』1万年堂出版

 前作『輝ける子』の続編。前作は小学生以下の子どもが対象だったが、今回は思春期の子ども。子どもの心の成長は依存と自立を繰り返すが、依存とは甘えでもある。充分な甘えが保証されない限り自立も難しく、甘えは人間としてとても大事だと指摘。
 思春期の特徴はこの自立と依存を激しく行き来する事だといいます。今、乳幼児もいずれ小学生中学生になります。『輝ける子』同様、子どもが小さい時に読んでおけば少しは違った子育てができたかもと思う読者が多いそうだが、私もそう思ってしまいました。ぜひ、よんでみたらいかがでしょう。

(コメント:と)

百世瑛衣乎著
『家事する男の作り方』

出版文化社 2002年 本体1300円 

 私は通勤電車の中で本を読む。この『家事する男の作り方』も電車で読んでいて、満員電車の中で思わずニマニマと笑っている自分に気がついてしまった。「ここまで奥の手をさらしていいのかい?」のノウハウ満載本。『家事する男育成』に励んだ人なら「そうそうそう」とうなずきたくなる箇所がいっぱいだ。柔らかタッチでとっつきやすく書かれているけど、芯はいたってまじめでまとも。育時連家事プロジェクトでWEB化に取り組んだ「ウイズリブの会の調査研究」も一部転載されていて、お役に立って光栄至極。

(コメント:ふ)

『子育ては損か?〜読者2118人のメール』
臨時増刊 アエラNo.53 12/15号、2000年、680円

 インターネット上で読者の意見を募って記事化し…ということで「声」のメールが多数+モデル取材ってとこかな。ホームページ厳選30にいくじれんサイトも登場「ここほど組織的に活動している男性中心の育児ページは珍しいでしょう」

(コメント:ね)

藤正巖・古川俊之著
『ウェルカム・人口減少社会』

文春新書、2000年、本体660円

 最近の少子化キャンペーンに疑いの目を向けていた者としては、やっと出てきた少子化キャンペーン批判、という感じで面白く読んでいます。70年代に「成長の限界」あたりも視野に入れて書かれた人口論のリバイバルっぽいにおいもあって、これが個人的に好みだったりもします (^^;)

(コメント:か)

ジュディス・リッチ・ハウス著
『子育ての大誤解』早川書房

一言紹介:
 子どもの人格形成には親子の関わりが決定的に大きな影響を与えるという、世間の子育て神話に対抗して、そんなんあんまり関係ない、ということを主張してアメリカで話題になったらしい本。
 子どもに対する親の影響を調べる多くの発達心理学的研究のいいかげんさをあからさまに指摘した点で評価できる(ただしおそらくそれは業界のお約束みたいなものだったと思うが)。ただし著者は、親の影響よりかは友人グループやコミュニティの影響のほうがよっぽど重要だ、と考えているらしいが、それを批判の槍玉にあげている研究と同じような仕方で根拠なく主張している点には問題を感じた。科学の政治性についてもっとひねったつっこみを入れてもらいたかった。ともあれ、厚手のハードカバーで、育児関連の本にしては読み応えのある内容で、学者のもっともらしい説に対抗して自らの親子の関わりを考えるさいに手助けとなるかもしれない。

(コメント:ど)

テレンス・リアル著
『男はプライドの生きものだから』

吉田まりえ訳、講談社、2000年、本体1800円

 大きな流れとしては、男の子を「男性」として社会化していく現在の文化の中に、男性が個人の感情を抑圧し「隠れたうつ病」を引き起こす根があるということを言っているのですが、母親との関係について述べている項があります。これは「甘え」とか「やさしさ」といったような、気分といいますか雰囲気的なところで子育てを批判する向きに対して、親との関係性の成熟の軸を提出するもんではないかと勝手に思ったりしています。「母親の支配」というのは(多少の共依存解釈も含めて)マザコン論をやっていくのに、おもしろいポイントではないかと思いました。

(コメント:こ)

遙洋子著
『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

筑摩書房、2000年、本体1400円

 タレントの遙洋子さんが、東大の上野千鶴子さんのゼミで勉強していった体験を描いている迫真のドキュメント! おそるべき(?)上野ゼミの実態も興味深いです。「ケンカを学ぶ」というのは、知と批判精神を研ぎ澄ますということなのですが、読み始めたら息が抜けなくなるような勢いがあります。

(コメント:ね)

永田えり子著
『道徳派フェミニスト宣言』

勁草書房、1997年、本体3200円

 あろうことか、私が初めて読んだ「フェミニズム」「フェミニスト」と括られる視点で総括された書籍です。はっきり言って無謀とも言えます。(^-^;;
 しかし、前提となるターミノロジー・文脈を殆ど置かずに論理展開しているため、あれだけの「言いたいこと」を詰め込んだにもかかわらず、素人の私が通読できました。驚くべきことです。永田さんってすごい…。
 トップダウンのフレームワーク構築と、ボトムアップの実体解析・条件分析という展開は、ソフトウェアエンジニアの頭にはとても馴染みやすいのでした。(笑)

(コメント:よ)

土場学著
『ポスト・ジェンダーの社会理論』

青弓社、1999年、本体1600円

 育時連MLのメンバーでもある土場学さんの新著。
 さまざまな社会理論、発達論、現代思想を通じて話が展開していくので、ちょっと難しく、途中で挫折しかねない。
 一方、プロローグとエピローグの部分では、わたしあなたについて語られる言葉がロマンティックに響く。
 この論理展開と詩的な言葉のつながりが見えてくると、けっこうおもしろく読めるようになる不思議な本。

(コメント:か)

西川、荻野 編
『共同研究 男性論』

人文書院、1999年、本体2400円

 育時連もその仕掛けた側なのだと思うけれど、昨今確かに父親をめぐるさまざまな語りがあふれている。
 その中でも「子育てする男」としての父親に目を向けたのが所収されている中谷文美さんの論文。育時連のこともバッチシ調べこんであります。
 本全体としては、テーマも文章の質も多様で、雑学に近いような印象がある。これを読んで「男」とは何か、って、わかってくるんだろうか?

(コメント:か)

田中喜美子 鈴木由美子 著
『「主婦の復権」はありうるか』

社会思想社、1999年、1400円

 よく書けていると思います。主題は林氏の主婦に対する認識の誤り。特に「フェミニストにあおられて」という部分を「そんなわけないじゃん」と強く否定しています。主婦って、人間ってそんなやわじゃないよって。
 反「父性の復権」論陣を張る場合にも、参考になるアプローチが多いと思いました。

(コメント:れ)

橘由子 著
『主婦になりきれない女』
ブロンズ新社

 ウツになる原因は人さまざまと思いますが、彼女の場合、「絵に描いたようなアッパーミドル」の家庭を作る直前でウツになり、そこからドロップアウトして、コンビニや運送やで働き、肉体労働するうちに、ウツからうそのように解放されたようです。
 何かを失うまいとしてウツになり、何かを捨てたら明るくなるってこと確かにあると思います。そういう元気が出る本なので、男と女の違いはあるかもしれませんが、おすすめです。

(コメント:ま)

蔦森樹 編
『はじめて語るメンズリブ批評』

東京書籍、1999年、本体2000円

 「ゲイスタディーズ」著者のひとり川口和也さん、フェミニズムと教育を考える団体「フェミックス」の代表取締役・稲邑恭子さん、「家庭科教員をめざす男の会」世話人の南野忠晴さんほか、総勢10人が、「わたしとメンズリブ」をテーマに原稿を書かれております。
 巻末鼎談(かなり長い)では、フェミニズムの上野千鶴子さんと蔦森さんが、メンズリブの伊藤公雄さんと徹底討論しております。
 川口さん以外はあまり「社会学」的ではありませんが(^^;、メンズリブ、男性にとってのジェンダー論、フェミニズムとメンズリブの関係についてなどに興味がある方には、面白く読んでいただける内容だと思います。
 表紙は超弩派手なメタリックグリーンです。

(コメント:け)

● 育時連ホームページに戻る