フルタイムで働こうと思っても働けないという女性の中からは、「夫に理解が無く、全く家事をしない。このままの状態で私が仕事を始めるのは不可能だ」という声がよく聞かれる。
そこで、夫が「男は仕事・女は家庭」と考えているかどうかが、家事分担度・育児分担度にどのような影響を与えているかを、『妻フルタイム家庭』と『妻非フルタイム家庭』を比較しつつ調べてみた。
1. 夫の性別役割分業意識
−夫の性別役割分業意識が強いと、家事分担度・育児分担度は下がるが・・・
性別役割分業意識とは「男は仕事、女は家庭」「家事・育児は当然女の仕事」という考え方を指している。この性別役割分業意識の強さを測るために、ここでは、「問1」の家事・育児に関する意識調査項目から、以下の項目に対する回答を取り出して得点化した。
・ きちんと家事をするかどうかで、女性の家族に対する愛情がわかる
・ 家庭のことを十分にできないなら、女性は働かない方がよい
・ 男性に家事・育児を求める権利は、専業主婦にはない
・ パートであろうと、女性が働いていれば男性も応分の家事をすべきだ
性別役割分業に否定的な答えの時は0点、どちらとも言えない時は1点、肯定的な答えの時は2点と得点を配分し、4項目の合計点を各回答者の「性別役割分業意識得点」とした。さらに、「性別役割分業意識得点」が0点〜3点の人達を性別役割分業否定グループ、4点〜8点の人達を性別役割分業肯定グループとした。
分析の結果、夫が性別役割分業を肯定しているほど家事分担度・育児分担度が低くなることが、明らかになった。
[グラフを見る]
次に同様の分析を、『妻フルタイム家庭』と『妻非フルタイム家庭』、それぞれについておこなった。その結果、
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『妻フルタイム家庭』の夫は、性別役割分業に否定的な割合が高い。
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『妻フルタイム家庭』でも、夫が性別役割分業に肯定的だと、家事分担度・育児分担度は低くなる。
特に家事分担度との間には、r=-0.5117と強い関係が見られており、『妻フルタイム家庭』において夫が家事分担をしない場合は、夫の性別役割分業意識の強さが大きな影響を及ぼしているものと思われる。
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『妻非フルタイム家庭』の夫が性別役割分業に否定的な考え方を持っていても実際の家事分担度・育児分担度は、『妻フルタイム家庭』で強い性別役割分業意識を持っている夫の場合と同程度にすぎない。
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ということがわかった。
確かに夫の意識のあり方は、家事分担度・育児分担度に強く影響を与える。しかし、たとえ夫が意識の上で性別役割分業に否定的であっても、『妻非フルタイム家庭』では実際の家事分担度・育児分担度が飛躍的に上昇することはないのである。
『妻フルタイム家庭』の夫は、もともと性別役割分業意識の少ない「理解ある夫」なのだと見ることもできる。また逆に、妻がフルタイムで働き続けているからこそ、夫も性別役割分業意識のハードルを超えることができたのだと考えることもできる。夫の性別役割分業意識と妻のフルタイム就労の、どちらが原因でどちらが結果か、今回の調査から断言することはできない。たぶん相互に影響を与えあっているのだろう。