§2 男は忙しいから家事できない?? −男性の家事・育児を考える−
セマってみました 家庭の実状〈アンケート調査より〉
 3 調査結果  4. 男性の家事・育児分担を左右するものは?

結果1 妻がフルタイムで働き、応分の収入を得ていると夫の家事・育児分担は増える


 一般に「男性が家事・育児に参加できないのは、仕事が忙しいため」と言われることが多い。しかし、妻・夫の就労状況との関係を分析したところ、「家事分担度」「育児分担度」は「夫の働き方」よりもむしろ「妻の働き方」の方に深い関係があることがわかった。妻がフルタイムで働き収入を十分に得ているほど、夫は家事・育児に参加している。

ここでいう「家事分担度」「育児分担度」とは、夫の家事・育児の分担状況をあらわす得点であり「家事分担度」「育児分担度」が0点なら、夫はほとんど家事・育児をしていないことを表す。「家事分担度」「育児分担度」が20点なら、夫と妻はほぼ等分に家事・育児を分担していることを表す。

1. 妻の就労形態−フルタイム妻と、それ以外の妻で大きな差

 妻がフルタイム・自由業であった場合は、それ以外の場合に比べて夫の家事分担度・育児分担度が高く、家事分担度では約3倍、育児分担度では 約1.5倍にもなっている。妻がどのような形態で働いているかによって、夫の家事・育児参加状況が大きく左右されていることがわかる。

 妻がパートタイム、自営業・家族従業員、家事専業主婦である場合で、夫の家事分担度・育児分担度の差はあまりない。パートタイムや自営業の妻は、家事専業主婦と同等の主婦役割を担った上で、更に職業時間を持っている状況がうかがえる。

 妻がパートタイム、自営業・家族従業員・主婦である場合、家事分担度・育児分担度にはほとんど差が認められなかった。よって、以後本調査では、妻の就労形態を「フルタイム」(フルタイム+自由業)と、「非フルタイム」(パートタイム+自営業・家族従業員+家事専業主婦)の2つに分けて考えていく。おのおのの家庭を『妻フルタイム家庭』『妻非フルタイム家庭』と呼ぶこととする。

 Q.妻について:就労形態を教えて下さい。(問19、問28)

グラフ:妻について:就労形態を教えて下さい

 妻がフルタイム就労をしている家庭では、夫の家事分担度・育児分担度が高くなることが分かったが、具体的に『妻フルタイム家庭』と『妻非フルタイム家庭』では家事・育児の分担にどのような差があるのか調べてみた。
 家事・育児のどの項目を見ても、『妻フルタイム家庭』の方が夫の家事・育児分担が多い。『妻フルタイム家庭』では「ほとんど妻」の割合が少なくなり、「妻と夫で同じ程度」の方向に向かって回答者数が多くなる傾向が見られる。まだまだ妻と夫が同等に家事・育児を担っている家庭こそ少ないものの、徐々に男性が家事・育児に携わってきている様子がうかがえる。

   Q.次にあげた家事・育児は、あなたの家庭では主に誰が行っていますか。(問3、問4)

  [グラフを見る]

2. 妻の収入−妻の収入が多いほど、夫の家事分担度・育児分担度は上昇する

 妻の収入が多くなるほど、夫の家事分担度・育児分担度は高くなっている。妻の収入が700万円以上の家庭と、130万円以下の家庭を比べると、家事分担では4倍以上育児分担でも2倍以上の差があらわれている。妻の働き方・経済力と、夫の家事分担度・育児分担度の高い関係がうかがえる。
 分析の対象を『妻フルタイム家庭』に限っても、妻の収入が多いほど夫の家事分担度・育児分担度が高くなるという傾向は変わらなかった。 家事(**) 育児(**)

 Q.妻について:およその年収(税込み)は、どのくらいですか。(問21、問30)    

グラフ:妻について:およその年収(税込み)は、どのくらいですか

3. 妻と夫の収入格差−妻と夫の収入が同程度なら、家事分担度・育児分担度は高くなる

 妻の就労形態や収入額によって、夫の家事分担度・育児分担度が大きく影響されることが分かった。そこでさらに、『妻フルタイム家庭』に対象を限定して、妻と夫の収入差によって家事分担度・育児分担度に差があるかどうかを調べた。
 その結果、妻と夫の収入が同水準の場合は家事分担度が明らかに高くなり、育児分担度も若干高くなることが分かった。この家事分担度・育児分担度は本調査中最高のものである。妻と夫の経済力が均衡していると、家事・育児の分担も平等に近づくことが明らかとなった。

 Q.妻・夫について:およその年収(税込み)はいくらですか(問21、問30)

<妻フルタイム家庭に限る>
グラフ:妻・夫について:およその年収(税込み)はいくらですか

4. 妻の就労時間・帰宅時間−妻の就労時間が長いほど、夫の家事分担度・育児分担度は増加

 妻の就労時間が7時間を超えたあたりから、夫の家事分担度・育児分担度が急に伸びている。帰宅時間に関しても、同様な傾向が認められる。しかし、妻がいくら長時間労働をしていても家事分担度・育児分担度は20には届かず、平等な分担になっているとは言えない。
 妻が職業を持っていても、短時間労働で早く帰宅している場合・・・つまり「家庭に支障が出ない範囲で働く」という場合・・・夫の家事分担度・育児分担度は低く、妻が家事専業主婦の場合と差がない状態であることがわかる。

 Q.妻について:平日何時間くらい職場で働いていますか。(通勤時間を含む)
  (問20エ、問29エ)

グラフ:妻について:平日何時間くらい職場で働いていますか


 Q.妻について:平日何時ごろに帰宅されますか。(問20ウ、問29ウ) 

グラフ:妻について:平日何時ごろに帰宅されますか

5. 妻の職種−妻が専門職の家庭では、家事分担度・育児分担度は高くなる

 妻が専門職の家庭は、それ以外の家庭に比べて夫の家事分担度・育児分担度が高くなっていた。
 しかし詳細に調べると、妻が専門職の場合はフルタイムで働いている割合が多いことがわかった。
 『妻フルタイム家庭』に限定すると、妻が専門職の家庭とそれ以外で、夫の分担度に差は認められなかった。 家事(-) 育児(-)


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