§2 男は忙しいから家事できない?? −男性の家事・育児を考える−
セマってみました 家庭の実状〈アンケート調査より〉
 2 調査結果の要約

● 男性と家事・育児の現状

 今回のアンケート調査では、家庭における夫婦間の家事・育児分担状況について答えてもらった。家事については多くの項目が「ほとんど妻がおこなっている」という回答で占められ、特に夕食づくり・トイレ掃除は90%以上の家庭で「ほとんど妻」となっている。家事に比べると育児の分担率は少し高くなっている。
 男性による家事・育児分担は確かにきわめて低調であるが、しかしその中にも家事・育児分担をある程度おこなっている家庭は存在する。果たしてどのような家庭で家事・育児の分担が実現されているのだろうか。
 この疑問に答えるために、さまざまな要因と男性の家事・育児分担状況との関係を調査した。方法としては、まず回答者の家庭における夫の家事分担・育児分担の度合いを求め、それぞれ「家事分担度」「育児分担度」とした。(「『家事分担度』『育児分担度』とは」参照 )次に、どのような要因によってこれら「家事分担度」「育児分担度」に変化があらわれるかを分析した。

● 大きい、妻の就労状況の影響

 調査結果を見ると、男性が家事・育児をするか否かに最も影響を与えているのは、

 妻がフルタイムで働き、応分の収入を得ているかどうか 

という点であることが分かった。調査対象の全ケース中、妻がフルタイム的就労をしている家庭の割合は17%であったが、妻がフルタイム就労の場合と、それ以外の場合では、「家事分担度」「育児分担度」に大きな差がある。また、妻の収入額や就労時間・帰宅時間と「家事分担度」「育児分担度」の間にも、強い関係が認められた。
 一般的に、男性が家事・育児に参加できないのは「男性の就労時間が長すぎるから」「男性の帰宅時間が遅すぎるから」と言われている。しかし、実は「男性の家事・育児参加」は、夫の就労時間・帰宅時間よりも、妻の就労状況に強く影響されているということが明らかになった。夫の就労時間や帰宅時間が同じ場合、妻がフルタイム就労以外の家庭よりフルタイム就労家庭の方が分担度が高くなっている。そればかりか、妻がフルタイム就労以外の家庭で夫の就労時間が短い場合と、妻がフルタイム就労の家庭で夫の就労時間が長い場合を比べても、後者の方が家事分担度・育児分担度が高いという実態が見えてきた。
 今回の調査では育児関連の質問に対して、子供のいる人には現在の育児の分担状況を子供のいない人には育児に関してどのような分担が望ましいと思うかを答えてもらった。その結果、子供がいない時点では、「男性も子育てにかかわる事が望ましい」という意識が強いことがわかった。ところが、現実に子供を持ってみると、子供を持つ前に思っていたほどは、男性が子育てにかかわれていないという現実が見えてくる。この落差は、妻がフルタイム以外の家庭で特に顕著となる。つまり、妻がフルタイム就労の家庭では、夫の子育てに対する当初の思いが保持され、現実化されていくが、妻がフルタイム以外の家庭では、夫の意欲がしだいにスポイルされていく傾向があるように推察される。
 妻がフルタイム就労の家庭に限ってさらに調べると、妻と夫の収入が同レベルである場合に夫の「家事分担度」「育児分担度」が高くなることが分かった。妻の経済的自立度と夫の家事・育児への参加の間には、強い関連性があることが確認された。

● 男性側の要因

 男性自身の要因に目を転じると、男性の性別役割分業意識が「家事分担度」「育児分担度」に影響を及ぼしていることが分かった。性別役割分業意識が強い男性は、家事・育児を分担することが少ない。特に妻がフルタイムの家庭において夫が家事・育児をしない場合は、この性別役割分業意識の影響が大きいものと思われる。
 しかし、妻がフルタイム以外の家庭では、夫の性別役割分業意識が少なくても「家事分担度」「育児分担度」が飛躍的に上昇するわけではない。分担度の絶対値を見ると、明らかに妻がフルタイム就労家庭の方が高くなっているのである。
 そもそも、妻がフルタイム就労家庭の夫は性別役割分業意識が少ないことが一般的である。「理解ある夫だから、妻がフルタイム就労を続けられた」のか、「妻がフルタイム就労を続けたから、夫の性別役割分業意識が少なくなった」のかは、今回の調査からは断定できない。たぶん相互に影響を与えあっているのであろう。

● 夫の家事・育児分担を左右するもの

 以上の知見から、夫の家事・育児がどのような要因によって左右されているかを、次の図のようにまとめてみた。

夫の家事・育児分担度を左右する要因


● 男性が家事をする家庭、しない家庭

 男性の家事分担度が高い家庭と、男性が全く家事をしない分担度の低い家庭は、どのような点が異なっているのかを調べた。まず「期待される夫の役割」としては、分担度の高い家庭では当然のことながら「家事・育児をすること」が高い割合になっている。分担度の低い家庭では、「経済的責任」を求める割合が比較的高くなっていた。
 家事分担の現状については、分担度の高い男性の88.3%が「今のままでよい」「本当はもっと自分がやるようにしたい」と答えている。「家事・育児をしている男性は、妻に言われてイヤイヤやらされている」という見方は誤っていることが明らかになった。また、分担度の低い家庭の女性の51.9%が「本当はもっと夫にやってもらいたい」と考えているが、分担度の低い男性の73.9%は「今のままでよい」と現状維持派であった。
 また、分担度の高い家庭では、「子供は3歳までは家庭で育てなくてはいけない」という、いわゆる「3歳児神話」を信じる割合いが低くなっている。妻が就労を継続するために保育所等を実際に利用し、家庭外の保育時間が決して子供自身のためにマイナスとはならないという経験をしたことが、「3歳児神話」の否定につながったものと思われる。

● 女性と男性の行動の自由度の違い

 自分の行動に関する自由度は男性より女性の方が圧倒的に低く、特に「夜の会合への出席」「外泊」「残業」等について、「配偶者の承諾が無くては実行できない」状況であることが分かった。これらの項目はすべて、夜の時間における行動の自由を表している。女性は男性に比べて夜の時間における拘束がかなり強いことが明らかとなった。特に乳幼児のいる女性は、行動の自由がかなり少なくなっている。


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