待機児を解消するためには言うまでもなく保育定員を増やすしかありません。ただ、資源には限りがあるので無限に増やせばいいというものでも無いです。 ひとつの考え方として、年間待機児の最大数だけ増やすと手もあります。ただ、このやり方だと実際には保育園に入りたい人が希望する園の場所と空いている保育園の場所のミスマッチがおこってしまします。実際、待機児と保育園空きの関係を見ると空きよりも待機児の方が少ない月が沢山見て取れます。 じゃぁ、どのぐらいの保育定員が必要なんだろう。と考えながらいろいろデータをこねくり回してみました。
まず、下のグラフを見て下さい
これをみると保育園の空きが増えていくに従い待機児は減っていくことがわかります。そして、保育園の空きがだいたい80ぐらいあると待機児は解消されるようです。
つぎに、下のグラフを見て下さい
このグラフを見ると、保育園の空きが40から50ぐらいまでは待機児は減っていきますが、それ以降は保育園の空きが増えても待機児はそれほど減っていないことが見て取れます。そしてその時の待機児数はほぼ10人以下です。
待機児を完全に解消するためには常に保育園の空きが80以上必要になります。ところが実際には保育園の空きが40から50を越えると保育園の空きを増やす効果は減少してしまいコスト対費用効果は低くなってしまいます。
ということで、とりあえずの目標は保育園の空き数が常に40から50あると言う状態かなと思います。では、保育定員はどう設定すればいいかというと、とりあえずぱっと思いつくのは
必要保育定員=現在の保育定員+(待機児の最大値-その時の保育園空き)+40〜50
というあたりでしょうか。
で、下の表が2001年の待機児ピークを元に必要な保育定員を計算してみたものです。
不足数は今年度(2002年度)の定員から必要保育定数を引いたものです。
0歳 | 1歳 | 2歳 | 3歳 | 4歳 | 5歳 | |
---|---|---|---|---|---|---|
必要保育定員 | 483〜493 | 561〜571 | 591〜601 | 581〜591 | 589〜609 | 557〜567 |
不足分 | 203〜213 | 69〜79 | 47〜57 | -2〜8 | 2〜12 | -52〜-42 |
個人的にはコストがかかっても最終的には待機児0をめざすべきであり、そのために保育園の空きを常時80名以上は確保できるような定員設定をしてほしいと思います。でも、特に0歳〜2歳あたりではそのためにかかるコストがあまりにも多き過ぎるんじゃないかなぁとも思います。
そして、実際には保育園は「選べる」はずのものです。その観点からから考えると保育園空き数80は必須なものに変わります。区内の認可保育園は約50園ですから保育園空きが80名というのは、平均すると各園に1.6名以上の空きが常にあると言う状態です。これが選べる状態かというと、この程度では実際には難しい気もします。
上の表を見ると3歳から5歳は減ることもあります。これは3歳から5歳はほぼ保育園定員が充足してきているということなんでしょう(ただし、3歳は今年から待機児が急に増えたのでそうともいえないのですが)。また、職員配置基準を見ると3歳は20:1、4歳以上は30:1で、保育園の運営コストのほとんどは人件費だそうですから、各園の定員が20名または30名を越えなければ定員増によるコストはそれほど増えません。そういう意味では3歳以上は保育園空き常時80名以上で待機児0を目指すべきだと思います。
保育園にお金が入る仕組みは複雑でよく分からない(まだ調べきれてない)のですが、保育園を常に空けておくということは、保育園にとっては「お金が入らない」状態にあると言うことのようです。そうすると、待機児解消のために必要な空きを作るためのコストは保育園が負担することになります。だったら、待機解消なんて目指さない方が「得」という経営的な判断もありえそうですね。場合によっては、そのためのコストを保育園だけに負わせるのではなく何らかの補助金を出すなどして社会全体で負っていくような仕組みも必要なのかもしれません。
待機児解消のために保育園空きが40から50必要なわけですが、これはいくつかのおこりうるミスマッチを解消すればもっと小さく出来るものじゃ無いかなと思っています(解消が難しいミスマッチもありますが)。 ミスマッチですぐに思いつくのは以下の2つです
上鷺地区に保育園が無かったためその地域の方たちは野方や沼袋、大和町あたりまで来ているそうです。そのために野方や沼袋、大和町あたりの保育園が足りなくなってくるという事態もおこってきているそうです。区はその解消のために一旦廃園にした上鷺宮保育園を復活させてミスマッチの解消をしようとしています。
区内保育園をみると、産休明け保育実施園は全体の約半分。延長保育実施園は約4分の1です。 そうするとどうしても産明け実施園や延長実施園に希望が集中しがちになることが予測できます。 実際うちの子は産明け実施園に空きがなかったために待機児になりました。 また、延長保育をやっている園ほど早く埋まるという傾向はあるように思います。
0歳はおそらく先程計算した保育定員を満たしても待機児は解消されません。 あちこちで言われていますが、待機児として出てこない隠れた需要があるからです。 例えば、どうせ申し込んでも入れないから申し込まない。ってやつですね。
現在の待機児数約160名。確かにとても厳しい数字ですね。 そう簡単に解消できるものではないし、この数を確保したとしてもどんどん隠れた需要が表に出てくることになるし。 それに、0歳はとてもコストがかかりますし、年度当初には当然生まれていない子もいるわけで、 他の年齢よりも年間を通したときに空きが大きくかかったコストを回収しにくいですからなかなか定員を増やしていくのは難しいのもわかります。 でもねぇ、それはやっぱりここまで待機児を放置したからこそのことなんじゃないかなぁと思います。 なんとか頑張ってもらいたいものです。
素人が考えたことでおかしいことがあるかもしれませんが、気づいたときには指摘してください。適宜修正していきたいと思います。
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