古川玲子
まず最初に、このアンケートが「育時連ホームページ上でおこなわれた」事の意味を確認したい。育時連ホームページに来る人は育児と仕事をなんとか両立したいと努力しようとしている人がほとんどである。従って本アンケートの結果は、単に
一般的な仕事を持つ親の現状
をあらわしているのではなく
「育児も仕事も大事にしたい」と意識的に考えている親の現状
をあらわしているのだ。
さて、育児と仕事を両立する上でのストレス項目を分析するにあたり、まず第一に着目したのは
・仕事があるために、家事育児が思ったようにできない
・家事育児があるために、仕事が思ったようにできない
のいずれがより多くストレス項目としてあげられるか、という点であった。
結果としては、男女共に多くの人が
・仕事があるために、家事育児が思ったようにできない
方に多くストレスを感じていることがわかった。
ただし、その内容には一部男女差が見られた。
女性では「家事が手抜きになっている」という項目に多くの票が投じられたのに比べ、男性は「仕事の日には家族と夕食をともにできない」と、手抜き家事どころかそもそも家に帰ることさえできていない。この男性の「仕事の日には家族と夕食をともにできない」という回答項目は当初設定されておらず、回答者から追加項目として設定されたものであるが、設定されるやみるみる投票数が増え、育時連ホームページに来るような人の間でも
「仕事があって帰らない夫、一人でキリキリまいの妻」
という構図は崩れていないことが読み取れた。
「なぜ夫は帰れないのだろう?」と他の項目を見てみると
「職場に残業は当然という雰囲気があるので帰宅できない」という項目に女性の2倍以上の男性が票を投じているところが目を引く。これを説明するための仮設としては
仮説1 |
女性より男性の方が「残業は当然という雰囲気」を敏感に察知する |
仮説2 |
同じ職場でも、実際には女性より男性の方が強く残業を求められている |
仮説3 |
「残業は当然」では子持ち女性は仕事が続けられないので淘汰されてしまい、そういう職場には男性だけが残っている |
仮説4 |
女性は、自分が帰らないと誰も家事を引き受けてくれないので、どんな雰囲気であろうと「帰宅しない」という選択肢は無い。男性は妻が引き受けてくれるので帰宅しないことが可能。
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などが考えられるが(他にもあったら教えてください)、やはりこのあたりが男女差を生み出すポイントなのだろうと思う。
また「子育てのために、仕事で穴をあけた」にも男性が女性の2倍以上投票しており、仕事に関しては男性の方がよりシビアな自己認知をもっているようにうかがえる。
逆に「人間関係」項目については女性が多くストレスを抱えており、喧嘩をしたり嫌味を言われたりと男性に比べて大変である。
人間関係ストレスについては、男女の置かれる一般状況の差と同時に、育時連ホームページに来る男女の状況差という要因も考えられる。
育時連ホームページに来る「男性」の家庭では、夫に限らず妻も育児と仕事の両立に対して少なからずプラスの志向性を持っていると予想されるが、育時連ホームページに来る「女性」の「夫」は必ずしもそうとはかぎらず、そこが人間関係ストレスの一因となっているのかもしれない。
しかし、ひところ言われたような「上司や同僚からの否定的な発言」は思った以上に少なく、これは嬉しい傾向である。
制度については、今も昔も困っていることの一番は「子どもが病気になった時」。
病児保育はニーズが高く、もっと身近で利用できたらと考える人が多い。
また職場では時短制度が無い、という職場も多く、育児時短制度に対するニーズがまだまだ満たされていない様子がうかがえた。
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