ワークショップ(No.93):「男は忙しいから家事できない??再び!」
【第一部】 「家事分担は“資源”と“権力”と“イデオロギー”の主戦場」 パネリスト:井口由美子 |
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先ほど調査報告をした井口です。家族は夫と子ども2人です。 我が家でもこの尺度で家事育児共有状況を調べてましたが、育児は5点近いものの、家事は2点ちょっと。やっぱり半分半分とは言えない状況でした。 さて、我が家のちょっと変わった点は、子どもの誕生に伴って夫が会社員をやめて自営業者になったことだと思います。 子どもを妊娠した当時、夫は貿易関係の部署にいて、帰る間際にトラブルの電話が入れば、もう夜中まで帰れない、という生活でした。トラブルはいつ起きるかわからないわけで、帰宅は不安定であてにできませんでした。私は遠距離通勤しておりまして、片道1時間40分くらいかかりました。となると、延長保育を使っても7時閉園の保育園に定時で迎えに行くのはほぼ不可能でした。 何かを変えないと、生活が成り立たないわけです。夫か私が仕事を変えるか、住まいを変えるか、何かしなければなりません。このような場合、夫が仕事を変えるのは世間では最後の選択肢…というか、ほとんど選択されませんが、我が家はそれをしたわけです。 夫は自宅で自営業者になりましたので、通勤がいりません。それで、子どもの保育園の送り迎えは夫の仕事となりました。家を出て保育園に行って帰るのが、私の通勤時間とほぼ等しく、子どもを預けなければ仕事はできないわけで、保育園の送迎が彼の通勤時間と考えて良いと思います。 この夫が、保育園では「協力的」「いいわね」と大評判でして、私としてはすごく不満です。母親は保育園の送迎をしたからといって、誰がほめますか? それが父親なら、こんなに偉いように言われる。おかしな話です。私がこれを言うと、夫は「僕が言ってるわけじゃないんだよぉ」と困っておりますが。 さて、このような状況となったのは何のおかげだったかと考えると、話し合いのおかげではないと思います。うちはケンカの下手な夫婦でして、今までケンカは数えるほどしかしていません。まだ子どもがいない頃、些細なことでケンカして、1週間全く口をきかず、お互いを無視して暮らしました。狭い家でそんな暮らしをするのもなかなか大変でして、なるべくケンカをしなくなりました。また、ケンカしたことによって調整される行動量はさして大きくありません。 では何のおかげかというと、私が「経済力は手放さない、絶対仕事を続ける」と固く決意していたことによると思います。私には、自分が仕事をするというのは生活の前提条件でして、その上で「どう暮らす?」という工夫があります。当然結婚の前提条件でもありました。 ルイジアナ大学の賀茂美則さんという方が、「家族革命前夜」という本の中で「家事分担は”資源”と”権力”と”イデオロギー”の主戦場」と書かれています。「私は仕事を続けるからね」を結婚の前提としたところで、性役割分業という”イデオロギー”はクリアされており、経済力を維持しましたので”資源”もほぼ均衡しています。これがそこそこの共有状況を実現できたカギであると思います。 |
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