結果1 |
妻が常勤で働き、応分の収入を得ていると家事・育児共有度は上がる |
分析の結果、「家事共有度」「育児共有度」を左右するのは、「夫の働き方」よりも「妻の働き方」だということがわかりました。女性が常勤で働き十分な収入を得ているほど、夫が家事・育児をよく行うわけです。「男性が家事・育児に参加できないのは、仕事が忙しいからだ」だとよく言われますが、後で考察するように、現実はそうではないのです。
1. 妻の就労形態 ─ 常勤の妻と、それ以外の妻で大きな差
妻がどのような形態で働いているかによって、夫の家事・育児参加状況に大きな差があります。妻が自営業主・常勤従業員の家庭では、夫は家事や育児をよくしていますが、妻がパートタイムや在宅ワーカーの家庭は、妻が無職(専業主婦)の家庭とそれほど大きな違いはありません。
妻が自営業主・常勤従業員の家庭は、それ以外の家庭と比べて家事共有度は約2倍、育児共有度は1.5倍ととても高くなっています。妻が経営者・役員、家族従業員、パート・アルバイト、在宅ワーカーの家庭と妻が無職(専業主婦)の家庭を比較すると、妻が働いているほうが家事共有度・育児共有度が少し高めになる傾向はありますが、妻が自営業主・常勤従業員である家庭よりも大幅に低い値に留まっています。
なお、妻が学生という3ケースは、家事共有度のばらつきが非常に大きくて統計的な意味で問題があること、また、子どもがいなくて育児共有度の分析から外れるケースが多いことから、家事共有度・育児共有度の分析からは外しました。
問21・22 妻について:現在の就労形態は、次のうちどれにあてはまりますか。
このように、家事・育児共有度のあり方は、女性の就労形態によって大きく3つに分けることができます。そこで、ここから後は、女性の就労形態を、以下のように分けて考えます。
- 妻「常勤」家庭………妻が自営業主・常勤従業員
- 妻「その他」家庭……妻が経営者・役員、家族従業員、パート・アルバイト・在宅ワーカー
- 妻「専業主婦」家庭…妻が無職
2. 妻の収入 ─ 妻の収入が多いほど、家事共有度・育児共有度は高くなる。 ただし、130万円以下は専業主婦家庭と同じ
妻の収入が多いほど、家事共有度・育児共有度は高くなります。ただし、妻の収入が130万円以下では、妻専業主婦家庭とほぼ同じレベルになってしまいます。
妻の収入が700万円以上の家庭と、130万円以下の家庭を比べると、家事共有度では3倍以上、育児共有度でも2倍以上と大きな差があります。女性の経済力が、家事共有度・育児共有度に強く影響しているわけです。「妻常勤家庭」同士で比べてみても、やはり、妻の収入が多いほど家事共有度・育児共有度が高いという傾向がありました。
一方、妻の収入が130万円以下の家庭の家事共有度・育児共有度は、妻専業主婦家庭とほぼ同じでした。調査した家庭の79.7%(無回答を除くと86.3%)は夫が常勤の従業員であり、妻の所得が130万円以下であれば夫の社会保険に妻が入ることができます。この、いわゆる「130万円の壁」の内側では、妻が働いても働かなくても、家事共有度・育児共有度に違いはないわけです。
問21・22-c 妻について:年収(税込み)はおよそどのくらいですか。
3. 妻と夫の収入格差 ─ 妻の収入のほうが多くても、妻のほうが多くの家事・育児をしている
夫の収入と比較して妻の収入が多いほど、家事共有度・育児共有度は高くなります。ただし、妻のほうが多く稼ぐ家庭でも、妻のほうが家事・育児を多くしていることに変わりはありません(家事共有度3.6、育児共有度3.4)。
4. 妻の就労時間
─ 妻の就労時間が長いほど、家事共有度・育児共有度は増加
妻の就労時間の影響は、妻の収入の影響と似ています。
妻の就労時間が長くなるほど、家事共有度・育児共有度が上がる傾向があります(ただし、その度合いは妻の収入ほどではありません)。また、ある程度以下の時間では妻専業主婦家庭とほぼ同じになるという点も、妻の収入の影響と同じです。家事共有度に関しては、妻の就労時間が6時間までは妻専業主婦家庭とあまり変わらず、9時間以上であれば2倍以上になります。育児共有度は、5時間までは妻専業主婦家庭とあまり変わらず、8時間以上ではっきりと高くなります。
妻が職業を持っていても、短時間労働の場合……つまり「家庭に支障が出ない範囲で働く」という場合……家事共有度・育児共有度は低く、妻専業主婦家庭と差がないことがわかります。
問21・22-b 妻について:平日何時間くらい働いていますか。(通勤時間を含む)
5. 妻の職場規模
─ 妻の職場規模が大きいほど、常勤の割合が高く、家事共有度・育児共有度が高くなる
妻の職場規模と家事共有度・育児共有度には関係が見られ、職場規模が大きくなるほど共有度が上がる傾向がありました。これは前回調査ではみられなかった結果です。ただし、これは直接の因果関係があるというよりも、「妻の職場規模が大きい → 常勤の仕事である割合が高い → 家事共有度・育児共有度が高くなる」のだと考えられます。
このように考えられる理由は、妻の職場規模が大きいほど、妻が自営業主・常勤従業員である割合が高いからです。今回の調査では、この割合は、職場規模29人までの場合13.2%、299人までで30.3%、以下63.2%、58.3%、84.2%となっていました。
問21・22-a 妻について:従業先の従業員数は全体で何人ぐらいですか。
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