カット ワークショップ:「男は忙しいから家事できない??」

【第一部】


パネリスト:百世瑛衣乎


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 いま、井口さんから発表がありましたように、今回の調査結果のまとめ(p36〜37)を見ますと、「関係が見られたもの」として上げられているのは、妻の就労形態、妻の収入、妻の就労時間などで、主に「妻の側に要因」があるようです。反面、「関係が見られないもの」としては、夫の収入、夫の職場環境、妻の要求、夫の学歴と、主に「夫の側に要因」が見られます。ということは、家事・育児共有度を左右するのは、もっぱら妻の仕事が大きくモノを言っているんですね。古川さんが前回〜今回と主体となって調査されたこのデータ結果は、8年前に引き続き、たいへん核心を突いたものだと私は思います。

 では、現実的にどう男性に家事を導入していくか。私は『家事する男の作り方』という本を書きましたが、全く未経験の男性も含めて数人を皆、家事する男性にしてきました。実は、男性が家事を継続的にできるようになるまでには、3つのハードルがあるんです。

 まず1つ目は導入期の「精神的なハードル」、2つ目は実践期の「技術的ハードル」、そして最後の3つ目が定着期の「継続のハードル」です。この3つのハードルをクリアしていかないと、日常的に責任をもって男性が家事をしてくれるようにはなっていきにくいんです。

 では、第1の「精神的なハードル」ですが、この時に気をつけなくてはならないのは、「話し合わない」ことです。つい分担という議論をしてしまいがちですが、それはマズイやり方なんです。なぜなら、どちらかが正しいとなるには、どちらかが正しくなくなる。つまり、議論して男性が勝てば、やらなくていいってことにされちゃうし、女性が勝てば、負けた男性は不愉快になりますから、家事をやってくれない。
どっちに転んでも、結果が悪いんですよ。だから、議論しちゃダメなんですね。
 じゃ、どうすればいいか。それには、「なるべく気づかずに足を踏み出させちゃう」ことです。一緒に買い物へ行く、味見をしてもらう、食器を運んでもらう、おかわりを自分で盛る、といった、なんでもない手伝いから、知らず知らずやらせてしまう。いかに気づかせずにヒョコっと足を踏み出させるかが勝負です。

 次に、2つめの「技術的ハードル」ですが、これにはHow To本や道具などが役に立ちます。その時に、女性向けの料理本ではなく、男性向けの料理本を用意してください。『danchu』とか、ケンタロウさんの本とかがおすすめです。男性向けの本って、やはり男性の視点で、男性の心をくすぐるようにできているんですね。だから、男性にとって読みやすいんです。これを利用しない手はない。
 道具としては、男性が参加しやすいようにしてあげること。だってピンクのレース付きエプロンじゃ、身につけられないですよね。そこは、流行りのシックなカフェエプロンにしてあげるとか。これなら、ユニセックス・デザインなので、一緒に使えますしね。
 それから、先輩風を吹かせて、「それ、違う」とか「そんなことも知らないの」といった言葉を発しないように気をつけてください。女性の方が経験値が高いのは、当たり前。ルーキーの失敗には目をつぶり、いいところをホメてあげましょう。

 最後の3つ目が、「継続のハードル」です。男性に、お手伝いではなく、責任をもって主体的に家事をしてもらう、仕上げの時期ですね。たぶんこの時期になると、自然に得手・不得手というか、好きな家事や苦手な家事が、お互いにある程度見えてきていると思います。そこで担当を決めます。そして彼の担当分野に関しては、彼にイニシアチブを任せ、女性は指図しない。もちろん、初めはなかなか続かないでしょう。洗い物が溜まりっぱなしで、うんざりするかもしれません。そんな時は、会社の同僚に接するように冷静にアプローチします。

「あの、洗い物溜まってるみたいなんだけど、いつやる予定ですか?」
「今度」みたいなナマクラ返事が返ってきたら、「今すぐやってください。臭いんです。ガマンできません」とキッパリはっきり要求しましょう。
 他にも、「生活向上委員会(ダメ出し用に作った名称)からチェックが入っているんですが、お風呂のカビ、なんとかしてください!」
「明日やるよ」「明日ですね。じゃあ、お願いしますよ(ビシッ)」と。
 で、やんなかったら、「自分の言葉が守れないの?」ってことで、締め上げる。あくまで「主体者が彼」であることをベースに話すこと。「なんで、やってくれないの」だと、「やってもらう」ってのがもう「家事主体は女」になっちゃってるので、私はオススメしません。

 そして、もう1つの手は、どれだけやったかをお互いに把握できる形にすること。
カレンダーに記号とかを決めてつけていくといいですね。すると、どっちがどういった家事をどれだけやったかがパッと見える。家事は毎日発生するものなのに、男性は一度やったら「やった」と思い込んで、なかなか継続的にならない。そこを「毎日発生するもの」だと伝え、実績を明確にする。男性は数字とかデータに弱いので、これは説得力あります。さらに、私はこれに「おこづかいアベレージ制」で、やった家事回数が一定ライン以上だとこづかいアップ、一定数以下だとダウンするというシステムを創設しました。そういったさまざまな手段については、本に載せていますので、ぜひ参考にしてみてください。

百世瑛衣乎 ホームページ http://momose.eqg.org/

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