カット ワークショップ(No.93):「男は忙しいから家事できない??再び!」

【第二部】

ディスカッション


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会場からの質問・感想・意見を交えてのディスカッション
会場(三重県・男性) 子どもは24歳と22歳です。
「残される人」の統計に興味があります。夫を亡くした妻は長生きですが、妻を 亡くした夫は後を追うように短命です。なんでだろうかと。自分で一人で生きて いく思いが比較的虚弱な場合は、一人になったとき弱いのではないでしょうか。

「男だから、女だから、〜しなければダメ」という理詰めでいくと、理屈ではわ かっても、男性でも女性でも反発するんですね。ほめられると気分がいいからやっ ていこうとする。いかに相手を気持ちよくさせるかが大事で、それが主体的に物事 を進めていくことになるのではと思います。仕事でも家事でも義務感でやるのは苦 痛です。
「男女共同だ、だからあなたもやるべき」では反発を招く。どうしたら喜んで楽しん でやれるか、やってくれるかを考えるところから入っていくと、知らず知らずのうち に男女共同参画のしくみになっていくと思います。
脇田 えーとその辺について、我が家の最新の喧嘩情報をひとつ。

うちはだいたいの食料品を生協の共同購入でまかなっていて、二つの生協に入っているんですが、だいたいその注文書は休みの日に書いておくんですね。二つあるので一人ひとつずつ書きます。

で、私がそれを書こうかなと思ったとき、夫が寝室で漫画を読みながらごろごろしていたんで、「いっしょに書こうよ」と誘いました。すると夫は、それに応じてリビングのテーブルに向かって並んで座ったのですが、引き続き漫画を読んでいるんですね。ずーっと。

私はしびれを切らして、私の分だけ先に書いてしまったんですが、後で「いっしょに書きたいから誘ったのに、がっかりだった」と夫に言いました。いっしょに書けば、「じゃこっちキャベツいったよ。そっちは?」なんて、楽しいじゃないですか。「せっかく休みの日なんだから、もっとイベントっぽく二人で家事をしようよ」と夫に言いました。

この夏、井口さんの別荘に家族で泊まりにいったのですが。ダブルで夫婦がいると、例えば私と井口さんが、特に声を掛け合わなくても、ごく自然にいっしょに台所に立って料理をするとか、おしゃべりしながら洗濯物をたたむとか、そういうことができました。

そのとき思ったんですけど、そうやっていっしょに家事をするっていうのは、その人とぐっと気持ちが近づいたような感じで、楽しいんです、すごく。それで、そりゃお友だちどうしで近づくんだってそれはそれでいいですが、せっかくだから夫婦でそういうことがしたいんだと私は思ったんです。

何か趣味のことだって、たまたま一致するものがあって、いっしょにやれたら夫婦の親しみが増すと思います。それはラッキーですね。でも別に一致しなくたってどうということはありません。別の人と楽しんだっていいことですね。

家事は、家族の生活を支えるものですから、それとは少し別の特別の意味があると思うんです。他の人でない、夫と共有して楽しむ、近い気持ちになることができればとても価値があるように感じると私はいいました。夫はそれを聞いてとてもよくわかったといってくれました。
古川 「ほめ育て」が大事なのは子育てに限らない、夫育てでも重要だ、ということですね。
男性が家事をするにあたって妻の「ほめ育て」が効果的、というのは事実のようですが、
「あたしはあなたの母親じゃないんだからね」「なんであたしがあなたを『育て』なくちゃいけないの。大人なんだから自分で考えなさいよっ」って言いたくなる事もあります。

でも、考えてみると職場で人を育てる時も同じですよね。いい仕事をした時に「よくやった」と言われればやる気も起きるし、評価されれば次も頑張ろうと思いますから。だから、相手が大人であろうと、職場でやるのと同じように「ほめて育てていく」というのは「あり」なんでしょう。

ただ、どうして女性だけが、家に帰っても職場の続きのように作戦を練ったりパートナーを育てたりなんだかんだしなくちゃいけないのかと思うと、疲れることもあります。
会場(埼玉県・女性) 5歳ともうすぐ2歳になる子どもがいます。今日は土曜の保育に預けてきました。市の職員です。

結婚して8年、夫とは学生のとき知り合いました。夫は転職して自営業です。私が働くことに理解があり、私も仕事をやめずにがんばりたいと思っています。

母から家事を学ばなかったので結婚したとき苦労しました。夫も一人暮らししたわけでなく、家事をあまり知りませんでしたが、見るに見かねて仕方なくやるようになり、料理が趣味になりました。育児についても、最初は興味がなかったのですが、子どもがかわいいらしくて、よくやっています。

家事・育児は無理矢理やらせるものでもないんじゃないかと思います。自分のできるところを楽しくやっていくのがいいのではないでしょうか。肩肘張って男女共同参画だからというのでなく、できる範囲でやるうちに、「やってもいいかな」と思うのでは。
古川 私も母から料理を教わってなくて、学生で一人暮らししたときに「味噌汁ってどう作るの?」と聞いたら「ほんだしを多めに入れなさい」と言われて(笑)、そんなものでしたが、なんとかなるものですね。
会場(埼玉県・女性) フルタイムで働いています。中1の子がいます。職場結婚で夫は9歳年上です。私が新人のときの教育担当で、「こんな若い子と結婚した」というので夫が家事に協力せざるを得ませんでした。若い子をだまくらかしたんだから(笑)それくらいしなくちゃ、という周りからのプレッシャーがあったりとか。

また、同じ時期に職場結婚の人が多くて、職場で情報交換ができたんですね。誰々さんの家では夫が朝ごはん作ってるらしいよとか、男性が家事をする情報を聞いたわけです。「だからやりやさいよ」というんではなくて、「いいね」という感じで話題にしていく中でやるようになったりもありました。男性の側でも情報交換しますし、よその家でそこの夫が簡単に料理や洗い物したりする姿を見て、「あ、あいつもやってるんだ」というのができてきたと思います。

私たちの場合はこんなふうに恵まれた環境があって、得手不得手はあってもそれなりに参加してきたんだなと思います。

若い人に聞いてみたいのですが、今の職場では若い人のほうがあまり家事や育児をやっていないように見えるんです。話を聞くと「やりたい」気持ちはあるようですが、実際はできていない。なんでそうなんだろう、と不思議なんですね。家庭科の男女共修とか、男性が家事育児する意識は進んできているのに、なぜ意識とは別に、できないのだろうか。皆さんの周りの男性はどうでしょうか。
小黒(育時連メンバー・男性) 私の会社は電機メーカーですが、最近残業が非常に多く、むしろ若い人のほうが早く家に帰っていないです。

私は子どもが小4と小1で学童保育に行っていますが、職場が同じで、週1回はどんなことがあっても、会議が入ろうと急なトラブルがあろうと、その日は帰るようにしています。それをしていかないと、どんどんやれなくなると思います。仕事との折り合いで辛くなることもありますが、他の日に埋め合わせをしてでも早く帰る日を作っています。

このアンケート調査結果を見てみると、「男だからやらない、女だからやる」というのでなく、やらざるを得ない状況でないと、誰もやらないんじゃないかと思うんです。私も妻が専業主婦ならきっとやらなかったと思います。

義務でやらなければとなるとますます嫌になるし、楽しめてやれれば一番いいんですが、やらざるを得ないなら誰でもやると思います。

「やらざるを得ない状況」ではないところで甘えている、というのが本当のところじゃないかなとなんとなく感じています。
会場(静岡県・男性) 長男夫婦と同居しており、孫が2人います。息子は自営業ですが、家にいるときはコンピュータに貼り付いています。コンピュータが男性の家事・育児の邪魔をしているんじゃないかと。ソフトの中に子育てのうまいようなのがあるとやりたくなるのではないかという気もしています。

自分の若い頃を考えると、少しは家事をやったけれど、やはり「やらざるを得ない状況」でないと、それにつけこんで何もしない、必要性がないとやらないというのはおっしゃるとおりだと思います。

ただ、適性というのがありまして、好きなジャンルとそうでないのがありますので、うまく補完しあってやっていくのが大事ではないかと思っています。

男は女性から見て子どもみたいなものですから、おだてて、気持ちよくやらせるという、女性の本能を発揮するといいのでは。あまりキツク言わないで、くすぐって、それが家事をうまくシェアするコツではないかと、自分の経験からも思います。
脇田 二人とも苦手な家事というと、我が家では「掃除」です。幸い、これは外注しやすい家事でして。なにしろ、さすがに毎日のご飯を作りに来てもらうのも大変ですし、出来合いばかりでも飽きてしまいます。洗濯も、なるべくクリーニングに出すのはともかく、下着までだすわけにもいきませんね。

現在は、シルバー人材センターの人に鍵を預けていて、週二日は、会社から帰って来て玄関に入ると、まぁ魔法のようにきれい、という恵まれた生活を送っています。

機械化とか、外注とか、家事を共有するという考え方とは異なるように見えますけれども、必要なときはゆとりを作ることで、よい雰囲気で家事共有をすることができると思います。
古川 去年行われた他のグループの資料に、「この家事をやっているか、誰がやっているか」という調査がありました。その中で「いわしの背開き」をしない人が大勢いて、脇田さんに「したことない人がこんなに多いんだよ」と言ったら「私はやらないよ。やらなくたって生きるに困らない」と言われて、それもそうだと思ったわけです。一人ひとり、こだわりが違って当然ですから。
会場(秋田県・男性) 皆さんは家事や育児を楽しんでやっているように聞こえたのですが、男が家事をできないと何が困るのでしょうか? 男に家事・育児をしてほしいんでしょうか?
井口 私の夫にはして欲しいです。そうしないと生活できないし、私の不満がどんどんたまって、2人ともハッピーでなくなるから。 他の方の話となると、それはそれぞれの夫婦の間の問題ですね。なので一概に「いかなる場合も男も家事をすべき」とは思いません。しかし、世の中の現実をみると、家事・育児の負担は妻に片寄っていて、それを不満に思う妻はずいぶん多いです。また、家事・育児が共有されていない夫婦は妻と夫の満足度に開きがあって、夫は満足だけど妻は不満足なことが多い。そういうのは夫婦2人ともにとって不幸なんじゃないでしょうか?

 私は「幸せに生きる」ことに関心がありまして、夫が家事・育児をしないことで2人がハッピーでなくなるのは残念なことであり、妻が望む場合には夫も家事・育児をして、2人でハッピーに暮らして欲しいです。
脇田 負担という意味では、特に子どもが小さいとき、例えば保育園の送りと迎えを一人でやろうとするとどうしても間に合わなくて、夫婦でローテーションを組まざるをえないとかがあります。

そういう場合は、やってほしいとかほしくないとか、好みの話でなく、生活を成り立たせるための必須条件ということになります。しかしその切実さは、子どもの成長とともに薄れてきますね。

それなら、負担が少なくて一人でも余裕でやれる状況ならそれでいいかというと、そうでもないんです。
我が家でこれまで夫婦の仲が最悪の時期は、私が育児短時間勤務(半日)を取っていた期間でした。時間的にはゆとりをもって、送り迎えも家事もできる。でも私は自分だけがメインに家事や育児をして、夫が普段どおり仕事をして、こちらに頓着していない(ようにみえる)状況にだんだんいらだってきて、不完全燃焼の喧嘩が増えてしまいました。

夫に家事をしてほしいということならそういえばいいようなものですが、私はそのとき、自分の役割みたいなものに縛られて、率直にいうことができませんでした。それで夫にとってはわけのわからない突然の爆発ということになったのですが…

私がフルタイムに復職すると、夫も私も、忙しい中でも気持ちの上ではたいへん楽で、風通しがよくなったことを感じました。人生の達人であれば、立場が違っても夫婦で気持ちよく関係を築いていくことができるのかもしれませんが、同じ目線で、同じことを楽しんだり苦労したりしているほうが、簡単に仲良くしていられるのは確かです。
久保 家事を共有しなくても、夫婦双方が満足して楽しいのであれば、それに対して「共有度ゼロだからけしからん」と考えている人はこのグループにはいないです。

ただ、妻が働けないのは「夫の協力がなくて、家事・育児が大変だから」という話をよく聞きます。夫が家事をしてくれないから。だって夫は仕事で忙しいから。…と。しかし、そう言っていてもちっとも前に進まないんじゃないでしょうか。どっちが先かという問題でもないんですが、夫がしてくれないから自分が働けないのだと考えていると出口が見つからない。

この調査をしてみて思ったのは、妻が「今の状況を変えたい」と思うならば、国や会社に勤務時間を減らしてくれと言うのも悪くないんですが、まず自分が「夫もしないといけない状況を作る」ことから始めるのが大事じゃないかということです。

個人的には、娘たちには、結婚するなら家事・育児をする男性をパートナーにしてほしいです。そのほうがラクだし楽しいですから。
石井(育時連メンバー・女性) 私が、この調査に関わろうと思った動機は、「女性の対立というか分断」のような状況を何とかしたいということでして、「女も働くべきだ」という考え方と「女には家の仕事がある」という考え方に分断させられる根底には、「家庭内労働の不平等配分」という大きな問題があるのだと考えます。この状態では、女性は身動きがとれない、でも、その中で先に働きにでた女性と未だ出ていない女性、出たくないという女性もいろいろですが、それらに分かれてしまったのです。男女共同参画社会で、国は財政的にも女性たちに働いて欲しいと思っていますが、女性が働くにあたって、女性たちの抱える仕事と家庭の「二重の労働」状態を何としても改善しておかなければならない、と考えていました。これは世界的にもなかなか改善できていないことなんですね。私は、女性が働きに出るなら、その分男性が中に入るのが当然ではないかと思っていて、でも、そのような動きがあまり語られていないのだとしたら、私はそっちの推進をやってみたいと思いました。別な意味で、女性のやってきた仕事(領域)について、男性にもっとわかってもらいたい、そのためには是非体験して欲しいということもあるのですが。

それで実際、これらの調査をしてみると、世間で考えていた理由とは違うことがわかります。例えば、男性には耳の痛い「男は忙しいから家事できない」わけではないこと。一方、女性の方も、「男性の性別役割規範でなく女性のそれで夫が家事するかは決まる」と言うような結果が出ますと、そうか、それでは男性はどうしたらいいのか、女性はどうしたらいいのか、という風にまた一歩先に進めるじゃないですか。そのために、このような調査は意味があるんだと、私は考えています。
古川 家事は嫌いか好きかについて言いますと、皿洗いが嫌なのではなくて、あなたが横になってテレビを見ているのに私が皿洗いというのが嫌、と思っています。やってほしいかと聞かれれば、やってほしいです。何割やってほしいかと言うと、10割やってみるといろんなものが見えてくるので、やれるなら10割やってみてはどうでしょうか、と言います。

「半分」って、どこが半分かわからないじゃないですか。自分が半分と思っても向こうから見ると2割とか、いろいろあるんで、それは家庭毎だと思いますけれども。
会場(山梨県・女性) 国は男女平等、男女共同参画に取り組んでいますが、我々の世代ですと「男は仕事・女は家庭」の固定的観念があってどうしようもない。男は厨房に入るなとか、そうした考え方がネックになっています。

若い人たちはそういったことはクリアできているのだろうと思って参加しましたが、やはり若い人はうまくやれているようだと感じました。
会場(埼玉県・女性) 結婚前は仕事をしていまして、結婚2年目で子どもが生まれて仕事をやめたんです。両方の家庭ともに母親は仕事をしていなかったため、女は家庭に入るのが当たり前という環境で育ちました。私は完璧なお母さん、スーパー奥さんになろうという気負いがあったんですね。家事・育児は自分が100%、150%やるんだと。

それで20年やってきて子どもも大きくなり、おととしから仕事を始めました。始めはパートでしたが、今はフルに近い仕事です。今まで自分が完璧に家事をしてきたので、夫は何もしないんですね。「家事はお母さんの仕事だから」「家事に手を抜くな。手が足りないなら仕事をするな」と言われます。

私は仕事の楽しさに気付いて、仕事をやめる気はないのです。あと10年も経てば定年退職ですが、この10年が勝負で、濡れ落ち葉になるか、熟年離婚になるか。この状況を打破しないと、このまま行けば離婚かな…と思っています。
脇田 あ、ちょっと質問。今うかがった、危機感をお持ちであるという話など、だんな様はご存知なのですか?
会場(埼玉県・女性) たぶんわかっていないと思います。「自分が稼いだ金でやりくりするのが女房だろう」と、だから家庭のことができないなら仕事はやめろ、という考え方ですから。そこを変えないと危ないんじゃないかなあと。
脇田 それではもし、私はこう思う、こうしたい、ということをだんな様にお話 ししたらどうなると思いますか?
会場(埼玉県・女性) 夫は、即、切れちゃいますね。
脇田 …えーとそれでは、だんな様も知らない重大な秘密を、他人である私たちが知ってしまって、これからいったいどうなるんだろうという、ハラハラドキドキ手に汗を握るたいへん気になる場面なのですけど…
古川 …巨大な秘密をまだまだ胸の中に抱えている方もいらっしゃるかもしれませんが、時間が来ましたのでこのへんで終わらせていただきたいと思います。

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