英国首相
トニー・ブレア殿   

拝啓

 私達は、日本で「男も女も育児時間を!連絡会」という会を運営しています。地球の裏側の国より突然の便りをさせていただく非礼をお許しください。

 首相閣下のパートナー、シェリー・ブレアさんのご懐妊は、アジアの私たちの国でも大きく報じられました。まずは、新しい命が無事に生まれることと、ご家族の健康と幸せとをお祈りさせていただきます。

 私たちの国での一連の報道の中には、首相閣下が日頃より家庭生活を重んじられていること、シェリーさんと家事と育児を共に担ってこられたこと、そしてつい最近になって英国においても男女ともに育児休職が法的に認められたことなどが含まれています。そこで不躾ながら首相閣下に育児休職をとっていただけるよう提案できないものかと考え、この唐突な手紙を書いています。

 英国首相という要職に就かれている閣下が育児休職を選択することは、世界中の人々にに範を示すことになるでしょう。育児に積極的に関わろうと思いながら一歩を踏み出せないでいる世界中の男性達やそのパートナー達にとっては大きな励みとなるでしょう。なによりもカップルかシングルかを問わず、仕事との両立に悩みながら育児に奮闘する世の勤労者たちにとって、大きな希望となることは間違いありません。そして、これは何よりも家族的責任を負う労働者に対する権利を認めたILO156号条約の精神を具現化するまたとない機会であると考えます。首相という仕事の性格上、休職期間は短くならざるを得ないことは重々承知していますが、育児休職、もしくは育児時間を取得するなどして男性・女性共に育児と仕事の両立が可能であることを世界中に示していただければと切に希望するものであります。

 本来ならば、このようなお願いは自分自身が属する社会の指導者に出すものではあります。しかしながらここ数十年、私たちの国には在職中に子供を作るほどの若い政治指導者は現れませんでしたし、具体的な行動で家事と育児に関わることを美徳とする政治家にも恵まれませんでした。育児と仕事の両立を望んで長期の育児休職や育児時間を選択したメンバーを含む当会はそのことを残念に思うとともに、こうした期待を抱かせる国家指導者を戴いた英国および英国民に対して羨望しつつ、深い敬意を払うものであります。

 不躾なお願いとは思いますが、是非ともお考えいただければと思います。

敬具

「男も女も育児時間を!連絡会」
太田睦(この手紙に関する代表者)

電話・FAX : 044-955-6807
郵便 :〒171-0042 豊島区高松3-8-8-203 大越将良方