Q5
スピッツの「ホスピタリズム」って何ですか?

 スピッツは1945年に「ホスピタリズム」という論文を発表しました。ホスピタリズムは施設症と和訳されますが、乳児院・孤児院や小児科病院等に長期間収容される場合に生じやすい、乳幼児の心身発達障害のことです。ホスピタリズムは施設内で個人的接触や愛撫を奨励するような看護原則により、発生が減少します。スピッツ自身、施設 等は子どもが一定の大人と十分な精神的関係を持てるように保育環境を整備することで、ホスピタリズムの発生を減じるべきであるという提案をしているのです。

 スピッツの時代の乳児施設と現在の日本の施設では状況が全く違いますから、「子ども+施設→ホスピタリズム」という安易な発想は間違いの元です。

 現在の日本の環境を見てみると、通所式の保育所利用程度ではまずホスピタリズムなどというものが発生する事は考えられません。通所式ではほとんどの場合、子供と親との間にしっかりとした親子関係が成立しており、その親子関係を基盤に子どもは保母達との関係を築いていくからです。また、通所式保育滞在型乳児院&養護施設ともに、子どもの数に対してある程度十分な保母の数(2〜3人の乳児に一人の保母という例も少なくない)を配置し、子ども単位での「担任制」を取っているところも多く、施設内でもホスピタリズムが発生しない考慮は十分になされています 。

参考文献
 *1 疑わしき母性愛 ヴァン・デン・ベルク著  川島書店