実は三歳児神話が広まったのは戦後です。1961年、第一次池田内閣「人づくり政策」の元で三歳児検診が開始されましたが、これと相前後する形で三歳児神話が広まっていきました。当時の厚生相児童局長・黒木利克氏は著書の中で池田総理の「要するに人づくりの根底は、よい母親が立派な子どもを生んで育てることなんだ」という言葉を受けて「これを施策の前進といわずして何であろう」と喜んでいます。ということは、それまではこのような視点は「常識」ではなかったという事です。
黒木氏は母の手による家庭育児を終始強調していきました。また、1964〜5年にはNHKが『三歳児』という母親向けの幼児教育番組を作成し、医師や心理学者も制作に関わって、母の役割を強調した三歳児ブームを巻き起こしました。三歳児神話は60年代に生まれたのです。
参考文献
*3 日本のフェミニズム5 母性 井上輝子他編 岩波書店