Q10
「母親」というのは子どもにとって特別な存在だと思うのですが。

 母親は子どもにとって特別な存在になりえます。もちろん父親も子どもにとって特別な存在になりえます。シャッファーとエマーソンが18ヶ月の子ども達を観察した研究では、主に母親にのみ愛着を向けていた子どもはその2分の1に過ぎず、ほぼ3分の1の子どもは主に父親に愛着を向けていたことがわかりました。そしてそのような心の絆の形成には、一緒に過ごしたり世話をしたりする時間的絶対量ではなく、子どもとの精神的交流の強さのほうがより重要であることがわかったのです。

 もちろん、子どもは父親・母親のいずれかだけと、ではなく双方と、また両親以外の人達とも精神的絆を結ぶことができます。「特別な」絆の数はさほど多くないとしても、たったひとつの絆より複数の絆を持つほうがより安定的でバランスの取れた成長が期待できます。

参考文献
 *9 母親剥奪理論の功罪 マイケル・ラター著 誠信書房