厚生労働省+育時連 個人としての立場での意見交換会

 この意見交換会のきっかけは、育時連の例会の中で出されたアイデアでした。いままで何人かのメンバーが、厚労省をはじめ、他の省庁の委員会などに参画してきた経験として、委員会という枠を離れた自由な雰囲気で、若手官僚の人達とざっくばらんに意見交換できたら、生活に根ざした実感として日頃考えていることが、多少とも吸い上げてもらえ易いのではないか、ということで考えました。
 日時 : 2003年6月21日
 参加者(敬称略)
  熊木 少子化対策推進本部事務局 課長補佐 (当時)
  丸山 少子化対策推進本部事務局 係長   (当時)
  田中 雇用均等・児童家庭局   係長   (当時)
  重石 会社員(育時連)     →提示資料(PDF)
  大越 会社員(育時連)
  富永 地方公務員(育時連)   →提示資料(HTML)
  小崎 大学教員・保育士(育時連)
  田尻 無職(育時連)      →提示資料(PDF)
  田中 会社員(育時連)     →提示資料(HTML)
  古川 会社員(育時連)     →提示資料(PDF)
  森口 会社員(育時連/文書参加)→提示資料(PDF)

大越 本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。今日の会は陳情とかではありません。「意見交換会」ということで、厚生労働省の方と育時連メンバーで、普段考えている事や状況などをざっくばらんに話せればと思っています。厚生労働省から出席されている方も、今日は純粋に個人として出席して頂いていますから、役所の公式見解ということでなく、個人としてのご意見でお願いしたいと思います。
熊木 あの、すみません、その前に「育時連」とはどういう団体でどういう活動をしていらっしゃるのか、簡単な説明をしていただけますか?
大越 (育時連の説明)
熊木 わかりました。私も子どもがいて保育園に行ってるのですが、自分が夜中1時2時まで仕事をしているような生活なものですから、保育園のお迎えは妻にまかせっぱなしというのが現状なんです。こんなこというと怒られちゃいますよね。
大越 いや、怒るなんてことは。(笑)
熊木 妻も、週に3日は7時に迎えに行ってますが、それでは仕事が回らないので週2日は9時にお迎えなんです。9時にお迎え。これも怒られちゃいますよね。
大越 いや、怒るとかそんな事はないです。
熊木 昨日は私が保育園にお迎えに行ったんですが、実は初めてのことだったんです。いつもは、朝が私で、お迎えは妻なんです。でもわたしの海外赴任のために妻が退職する事になってしまい、昨日は妻の送別会だったもので。妻のほうが私よりも給料がよかったんですけどね。
大越 そうだったんですか。大変ですね。 子どもを持ってみてどうですか?
熊木 子どもは、やぁっぱかわいいですよね。
大越 では、進め方としては、育時連メンバーの方から提案なり考えを順番にプレゼンしてもらいます。それについてコメント・ディスカッション等あればやっていくという形で行きたいと思います。
では、富永さんからお願いします。
富永 富永です。自治体の職員で、労働組合活動にも関わっています。
厚生労働省の吉岡てつをさんの講演を聴いたり、資料を読んだりして、次世代育成支援対策に対し要望したい事がいくつかありますので説明させていただきます。(以下、資料説明)
熊木 少子化対策は実はやっとはじまったばかりで、この次世代育成支援対策推進法案はその第一歩の段階と考えています。これまで保育所の整備や育児休業制度制定などはなされて来ましたが、「働き方の見直し」については未着手でした。経済情勢を考えると「働き方の見直し」の方向はマイナス要因になると捉えられやすく言及が難しかったのですが、やはり状況改善のためには「働き方の見直し」が必要だと考えています。
今回の「次世代育成支援対策推進法案」は、「働き方の見直し」にはじめて正面から言及したものです。これは本当に第一歩目です。
大越 これまでなぜ「働き方の見直し」ができなかったのですか?財界からの圧力などがあったからでしょうか?
熊木 これまでは「厚生省」「労働省」というふうに縦割りになっていました。少子化は厚生省の管轄ですが、働き方は労働省の管轄です。縦割りの状態では「少子化対策として働き方を見直す」のようなことは困難でした。他省の管轄であることには着手できませんから。
今回「厚生労働省」になったことで、この辺を連携を持って対応できるようになりました。
子どもの問題には、「親の子育て力」のようなことも密接に関わってきます。
いわゆる「親育て」ですが、これは文部科学省の管轄となりますので文科省とも連携を深めつつ進めています。
私が今必要だなと思っている3つの点は
  • 保育所のような社会的子育て支援を、共働き家庭以外も利用できるようにする。
  • 子育て力の前提となる親育て
  • 働き方の改革
です。どれか1つだけではダメで、いろんなことを同時にやっていかなくてはならない。

私は少子化に関る前は介護関係をやっていました。介護は介護保険の形で社会化がかなり促進されていますが、介護に比べて「子育ての社会化」は5歩も10歩も遅れていると思っています。子育てについては、立場による意見の相違がとても大きい。同じ現実を見ても、その捉え方が人によってかけ離れていて、とてもまとまらない、というのが現在の状況です。
たとえば保育所への行政支出について、同じ「女性」でも働いている女性は「もっとお金を出してもっと保育を充実して欲しい」と言いますが、専業主婦の方は「なんで保育所ばっかり」と言います。労働者と企業の間も違いが大きいですし、保育所とその利用者の間の違いも大きい。世の中のサービス業は「お客様は神様」が基本になっていますが、保育所は違うんですね。まだ「措置」的な風潮が残っているような気がします。こういう風に、意見の距離がありすぎて話し合うこと自体が困難な状況でして、「子育てを社会化しましょう」にたどりつくまではかなり遠い道のりがあると感じています。
富永 「仕事と子育ての両立を認めたがらず、業務に全身全霊を捧げよ」といった企業風土・企業文化があるでしょう。これを何とかしないとダメなんじゃないでしょうか。
大越 では次に、古川さんお願いします。
古川 古川です。「企業」に勤めています。育時連ではお手元にお配りした調査をやったりという活動をしています。今日は持ち時間が短いので、一発芸風の題名で企画書を作ってきてみました。(以下、資料説明)
熊木 この調査はどこがやったんですか?
古川 私たちが。東京ウィメンズプラザの補助でやりました。
熊木 この調査、私どもの方でも有名で、私もこの「意識が低くても必要ならやる」というところなんか「そうかもしれないなぁ」と思ったりしていました。育時連さんがやった調査だとはいままで認識できていずに失礼しました。

提案は面白いと思いました。父親学級や両親学級で父親の巻き込みは図っているのですが、確かに「熱いうちに」という要素は欠けていますね。実習もせいぜいが人形を使ったものですし。
古川 ホンモノの生きた赤ん坊、お風呂に間違ってつけちゃうと死んじゃうような生きた赤ん坊をこれから育てていくわけですから、やはり人形を使って手を動かす練習だけするのとは違います。
熊木 違いますね。産院でというのも面白いと思うのですが。
古川 産院でできると、ほぼ100%の親をターゲットにできますから、歩留まりが悪くてもパイが大きい分影響度は高い。父親学級などは参加する親自身がもともとそういうことに関心のある層で、数も限られますから、一番届かせたいところに届かないと思います。
これは厚生労働省さんにしかできないことだと思っていて、ぜひやっていただきたいんです。
熊木 大変、面白いご提案ですが、「役所が指示して行う」というものではないんで、そこはとても難しいです。主体的にご協力いただける病院と話して協力を得たりということがどうしても必要です。
田中 僕は実家が産婦人科なんですけど、見ているとやっぱり考え方はかなり保守的です。父親なんかどうでもよくてお母さんと赤ちゃんだけを見てる。
小崎 うちは出産の時微弱陣痛ですっごい長い時間かかったんですけど、修羅場になったら「お父さん、出てってください」って感じでした。とにかく母親と生まれてくる子どもが最優先って感じで。
古川 そりゃあ、産むときはねー。男の人が産むわけじゃないから。
熊木 お医者さんとお話していけば可能性はあるかもしれません。
今こういう、「産院で父親の保育教育を原則実施」しているのは、私の知る限り六本木にある病院です。そこは外国人の方の出産がとても多くて、外国人の方は回りに親戚等がいなくて孤立育児になってしまう可能性が高いので、その防止のために父親の保育教育も必ず実施していると聞きました。外国人の方にはできているけど、日本人にはできてないというのが現状。でも、保健師からのアプローチとか、産後の対策でいくつか考えられることはあります。
大越 では、次は小崎さん
小崎 小崎です。大阪で保育士をしていました。今は保育を教える方の仕事をしています。これからの保育所は、子どものケアだけでなく家族全体の援助が仕事になってきます。そういうことを教えたりしているのですが、家族援助と考えると、男性保育士がいた方が父親が話したり相談したりしやすいんじゃないかと思ってます。そういう面から見て、男性保育士の数を増やすということを戦略的に捉えて進めていけないでしょうか?男性向けの保育勉強会なども、戦略と捉えて進めていって欲しいです。
熊木 現場でも、「親育て」の必要感じてらっしゃいますか?
小崎 はい。それはすごく感じます。
熊木 男性保育士も、数が少ないと良くないんですよね。浮いちゃうっていうか。「奇特な人がやってるんでしょ」みたいに捉えられちゃう。もっと数が増えないといけないと思ってます。
小崎 大阪は男性保育士の会が活発なんですよ。それはやはり数が多いからです。 保育士の半分が男性という園も中にはあるんですよ。
(一同) へーーー
熊木 保育についてですが、現在の日本は高齢者にはお金を出しているのに子どもにはお金をかけていません。これはアンバランスだと思っています。子どもにはもっとお金をかけるべきだし、そちらの方向に進めていく計画を考えています。
富永 それは、増税という方向ですか?それともパイの分け方を変える?
熊木 正直言って、日本は税負担はもう少しはできるんじゃないかと思ってます。ヨーロッパ含め諸外国に比べても、もちろん北欧なんかは例外としても、日本の現在の税負担は高いほうでは決してない。
ただ、現在の経済状況で大幅な増税というのは現実的に難しいかと思いますので、パイの分け方を変えることも考えるべきだと思います。高齢者福祉の効率化を進めるなどの方法を考えるべきと思います。
富永 誰だって高齢者にはなりますが、子どものいない人はけっこういる.子どものいない人は、そんな負担、反対でしょうね。
熊木 日本の福祉は「世代間扶養」のシステムによって成り立っています。年金も、自分が出した年金がずっとどこかに貯金されていて返ってくるわけではなく、そのお金は現在の高齢者世代扶養のために使われ、自分自身は自分より若い世代によって扶養されることになる。その観点から見ても。次世代の育成は全ての人にとって必須な事です。
ただ、おっしゃるように今は意見の対立があまりに大きくて意見集約が困難なのが現状です。

まだ全然現実的な話ではありませんが、夢物語としては介護保険のように独立した財源を持って次世代育成にお金をかける制度というのも考えられます。
もしそうなっても、介護保険のように何千円なんて負担ではなく、もっと少ない負担でかなりのことはできると思います。
しかし一方で、子育て支援に保険という形が適しているのかどうか、この点については議論も多く、結論は出ていません。
古川 保育のお話が出たのでお聞きしたいのですが、政府は現在の保育所と幼稚園の形ではなく、その両者を融合した制度を考えているという報道がありました。私は保育所と幼稚園の融合自体には特に反対ではないのですが、幼稚園に比べて保育所のほうにかなり多くの税金が使われている現状から「保育所と幼稚園を融合した制度」へ移行すると聞くと、現在保育所を利用している親からは「保育内容が低下するのではないか」という危惧が当然出て来ます。その辺はどうなのでしょうか?
熊木 ヨーロッパなどの状況と比べると、日本の保育はお金がかかりすぎていると言われています。僕自身は批判的な意味ではそう思っていません。日本の保育内容は世界的に見ても良いと思います。質が高く、ノウハウがきちんと積みあげられてきている。それは非常に貴重な資産だと思っています。ですが経済的事実として、0歳1人の保育に1ヶ月20万円の経費がかかるとか、それが東京では40万円だとか言われると、やはりそれはなんとかしなければならない問題だとも思います。保育の問題には、サービス提供側としての保育所とサービスを受ける側としての親が存在して、この両者の利害が一致しない事が多いです。それから、厚生労働省としては「保育される子どもの目から見て」という視点を決して忘れるわけには行かない。そういう意味で「質を落として経費削減」というのはダメだと、これは思っています。でも、それにしても40万円はなんとかしなくちゃ。
小崎 僕は公立保育園の保育士だったんですが、そこを離れたあとでいろいろ調べて、公立保育園の子どもの昼食が一食で3000円もしてたと知って驚きました。
古川 3000円!?高い!なんで?
小崎 人件費。僕も公立園で保育士してた時はそんなこと考えなかったんですけど。
熊木 日本の保育の高いノウハウを捨てずに、うまく効率化していく方法はあるのか?すごく難しいです。今はまだ、意見の対立があって議論がないという状態。これからあちこちで議論を積み上げていかなくてはと思います。今回の法案提出がいいチャンスになればと考えています。
小崎 私立の保育園では、2〜3年目の保育士が2人で40人の子供を見るような状態が珍しくない。公立の保育士に言わせると、そんな状態は『保育』じゃない。あっちでワーワー、こっちでギャーギャーってなって、その中で経験の浅い保育士が怒鳴りまくるしかないんですから。
熊木 子どもの目から見て保育の質を低下させずに効率化しえるのか。民営化や直接契約制などについて、そうした点からも考えるべきではないでしょうか。
大越 では、次は田尻さんお願いします。
田尻 田尻です。橋本総理の時に諮問委員などを務めたことがあります。
政策についてですが、総花的になっちゃったらダメだと思うんですね。戦略として数値目標を立てて、ターゲットを絞って攻めていかないと。女性の労働とか賃金とか色々あると思いますけど、「男性の育児・家事」はすべてに通じていくと思う。今回「男性の育児休業取得10%」という目標を明確に打ち出したのは評価します。(以下、資料説明)
熊木 先ほども言いましたように、1つだけではダメだと思っています。あれもこれもやって行かなきゃならない。でも、おっしゃるとおり戦略目標は必要です。厚生労働省から「少子化対策プラスワン」を打ち出して、現在関係閣僚への話も済み、政府としてこれを推進していく事になっています。平成17年度からはプラスワンにもとづく行動計画の実施が始まります。経済界の了解も得るよう、経団連への話しかけもかなりやっています。

男性の育児休暇取得ですが、おっしゃるとおり国際的な統計数字がありません。実際は「統計に出せないくらい少ない数字」「数パーセント」というのが実情です。数パーセントというのは、多くても5%以下という感じです。どの国でも男女間に賃金格差がありますから、どちらが休むかという事になれば、どうしても賃金の低い女性の方が休む事になるんです。
日本は今0.55%ですが、これを10%に持っていく方策あるんでしょうか?田中くんどう?
田中 僕の方から意見をお聞きしたいのですが、パパクオータ制というのは、強制ではなく期間が少し長く取れるという優遇措置ですね。この程度のパパクオータで状況をガラっと変えることはできると思いますか?
富永 ガラっとは変わらないでしょう。制度化することで男性の取得を推奨しているメッセージとして重要になります。あるとないでは違うと思います。
田尻 イメージ戦略としてね、大きいですよね。
大越 女性が働き続けられるようになることがポイントになるように思います。そこが変われば、いろんな状況が変わってくる。いろんな状況がからみあっているので、因果関係は逆かもしれませんけど。女性が責任ある仕事をさせられる事。それに伴った賃金を得ることが必要だと思います。賃金格差が大きいと男性は取りにくい。
田中 我々は公務員で、職場結婚したりすると夫婦の間に収入格差はほとんどないんです。その状況でも、男性は育児休暇を取っていません。この事実を見ると、「ホントに賃金の問題なの?」って気がします。
重石 共働きしてればね、育休の間の生活費ぐらいは何とかなるんですよ。だからたぶんお金だけの問題ではない。
古川 有給休暇も捨ててるような日本の文化で、「権利として取得」するかというと、たぶんそれはあまりないと思う。でも、女性の立場から言うと、夫にも子育てに向き合って欲しいと思っている妻が「私だけではどうしても2月までしか休めないけど、あなたが取ってくれれば無認可を利用せずに4月に認可園に入って慣らし保育までゆっくり見てあげられる。この子のためにもいい」と殺し文句を使う事ができる。これはすごく大きなメリット。
熊木 今育休取ってる男性はほとんどそんな感じでしょうね。
古川 今は1人でとっても2人で取っても期間が同じだけど、2人で取ったら少し長いとなれば、そういう交渉でもうまく使えるという気がします。
富永 それに、1歳前後の頃が一番かわいい時期ですね。この頃の男性取得がお勧めでもありますね。
小崎 男性にもっと育児の楽しさを知ってもらいたいですね。
大越 では、次に重石さんお願いします。
重石 僕は、もっと消費税をあげて欲しいということを話します。(以下、資料説明)専業主婦の育児不安を治めてあげても、じゃあそれで子供の数が増えるかっていったら、増えないですよ。消費税なんか、もっと上げればいいと思う。生活苦しくなったら女性も働くでしょ。僕は専業主婦税を導入したいくらいですが、平等に税を取る消費税だけでもあげて欲しいです。そうやって働かざるを得ない方向に持っていった方がいいと思う。女性も職場でもっと頑張って働いて欲しい。普段がんばってれば、子どもが病気になったりしても「こういう時は帰ってやんな」ってみんなフォローしますよ。それがなんだかいい加減な働き方しかしてないと「なんでオレがあいつの尻拭いをしなきゃなんないんだ」って感じになる。
熊木 増税について理解のある意見をいただけるとほっとします。増税はいずれ必要になると思います。これから企業のビヘイビアは変わっていく、変わらざるを得ないと思ってます。
その背中を押してあげる事が重要。日本においては、育児休業・介護休業等、制度はほぼ整ってると思います。どれも、性別に関わらず取得する事ができますし。ただ、それを利用し取得するような雰囲気ができてない。その雰囲気を作っていくのが今回の次世代育成支援対策推進法案の大きな目的です。

先ほども言いましたように、子育てに関しては立場による意見の乖離が非常に大きいです。「子育て支援は女をナマクラにする」「保育所は親子を引き離す悪い施設だ」「女がファッションのように働くのを税金で支援するのか」というふうな意見は今はまだまだたくさんあります。大きな流れは男女共同参画の方向に向かっていますが、この「意見の対立」のなかで、全体をうまく持っていくことが最重要と感じています。
大越 では、今日は子連れの田中さんお願いします。
田中
(育時連)
待機児童ゼロ作戦ってありましたけど、現実問題、保育園の待機児童は減ってないですよね。どうなってるんでしょうか?国は地方分権の時代ですからといって自治体まかせだし、川崎市に「どうなってるんだ」って聞くと、国がお金を出してくれないから保育園を増やす事はできませんって答えです。
まあ、定員超受け入れとかやってますけど、国と地方自治体の温度差を感じます。
今この「待機児童ゼロ作戦」はどういう状態なんですか?

それと、小学生の放課後の居場所の問題についてです。川崎市ではこの4月からすべての児童を対象にした「わくわくプラザ」という放課後事業がはじまりました。この全児童対策事業でも国の補助金がもらえるんですが、そのハードルがとても高い。これまでの学童保育ですらクリアできない条件なんです。これってホントは補助金出したくないってこと?とか思っちゃうんですけど。
丸山 国の予算がのきなみカットされる中、保育所にかけるお金はカットされずに来ています。これは事実です。ですが、確かに待機児童は増えています。
たぶん、保育園が入りやすくなっていくことで、いままで入所を諦めていた人の潜在ニーズを掘り起こしたという面が大きいと思います。自分と同じような状況の隣の人が入れたから、じゃあ自分も申請しよう、という流れで潜在ニーズが掘り起こされ、待機児童が減らないというのが実態かと。わくわくプラザについては、ちょっと今すぐには分かりません。
田中
(育時連)
保育園は規制緩和をしたはずですが、企業の参入も少ないですね。 規制緩和が効いてないんじゃないですか?
丸山 規制を緩和しても、企業は得じゃないと入ってきませんよね。保育に企業が 参入して得と感じるような、補助金とかそういうものが必要なのかなと。
田中
(育時連)
でも、東京都の認証保育園には企業の参入、増えてますよね。
富永 それは結構儲かるからだと思う。都からの補助金も出るし。
丸山 今日の話を聞いてきて、育児休暇などは「取った方が得だよ」という形に持って行く事が重要なんだと思いました。
富永 育児休業をタイムアカウント制にするとか、現在義務化されていない「育児のための短時間勤務制度」を義務化して、請求すれば必ず取れるようにするのもいいと思います。
丸山 所得保証、今40%ですよね。これを上げる事でくすぐりになるかな。5万や10万なら取らないけど30万と言われるとちょっと考えるかもしれない。「○○しないとダメです」のようないわゆる「規制行政」じゃなく、たとえば条件を満たしている企業に認証を与えて、それが企業にとって価値を持つような形に持っていった方が有効なのかと。
田尻 それでいい学生が取れるとかね。それはあるかも。 政府の仕事を受注しやすいとか、そういうことはできないんですか?
丸山 行政からの発注は、発注額によって競争入札にするか指定入札にするか等がきっちり決められているのでそれは難しいですね。入札制度で、一番良いものを一番安く提供するところから購入するというのが方針ですから。そこにいろいろな価値判断を入れると、まずい事が起こりやすいので。
大越 これまで日本は、働く男性と主婦と子ども二人のモデル家庭を想定し、そこへ誘導する政策を取ってきました。最近の厚労省の一連の動きは、より個人をベースにし中立的なものへ変えようという姿勢が見えて、個人的には評価してます。が、省内でそういう方向へ政策を変えていこうというコンセンサスは得られているのでしょうか。
丸山 年金の3号問題も含み、そういう方向に進んでいくと思います。出生率低下はもう何年も続いていて、とにかく生産年齢人口がどんどん減って行くことだけは絶対の事実です。そうなると外国から労働力を呼び込んでいくか、今まで働いていなかった女性や高齢者に働いてもらわなければ立ち行かなくなる。
重石 損か得かだけじゃなくて、幸せかどうかもポイントなのでは?僕は講演とか頼まれると「育休取って、昇進も遅れて、損してるように見えるかもしれないけど、でも子どもとかみさんとうまくやってけてる僕ってハッピーじゃない?」って話すんですよ。
富永 オレはそれは嫌だー、って言われたりしてね。
重石 ああ、そういう人もいますけどね。それはそれでいい。
田尻 大企業に勤めてる女性ほど、結婚や出産で辞めちゃうってのは、あれは何なんでしょうね。勤めてたほうがずっと得なのに。
大越 それは、玉の輿結婚で辞めても大丈夫なほど高給取りの旦那をつかまえられるからだよ。辞めても大丈夫なら辞めて好きなことやってたほうがいいと思うし、ぼくでも辞めちゃうと思うな。だから、女性が働きつづけるためには、損得だけでは無理がある。
古川 子育ての間はどうしても戦力として低下するでしょう?早い話、トラブルが起きてるのに「お迎えだから」って帰っちゃうSEってどうよ、ってことになる。できる女性ほど、そういう中途半端な状況に我慢ができなくて辞めてしまう。自分に対してプライドがあるから。
大企業に勤めてると、子どもを抱えて働きつづける女性のロールモデルがまだまだ少ない。上にいるのは24時間働けるおじさんのロールモデルばかりで。今この3年間を乗り切ったらこんな感じになる、次の3年間を乗り越えたらここまでできるようになる、ってのが見えないから、今の状態がずーっと続く気がして辞めざるを得ないと判断する場合も多いと思います。何か、会社を超えたロールモデルやチューター制度があれば救われることも多いのでは。
小崎 子ども達を見てると、もうしっかり男女のロールモデルが刷り込まれていてちょっと嫌になる事ありますね。おままごとしててもお父さんは鞄持って「行ってきます」と会社に出かけて、帰ってきたら女の子が「遅かったのね」って。ロールモデルが貧しいなぁとすごく感じますね。
丸山 残業についてなんですが、どうなんでしょう。どうして残業するのか。仕事が多いんでしょうか?それとも付き合い残業みたいなのがあるんでしょうか?
重石 つきあい残業もない事はないが、僕は生産設備作ってるんで工場のラインが止まったらもう帰れないですよ。ライン止まったらすごいお金が飛んでいきますからね。お客さんには「その金払え」とか言われちゃうし。
大越 僕は仕事が自動車関係ですが、忙しい人と忙しくない人が極端に別れます。営業なんか早く帰れるのに、開発部門はすごく残業していたりする。サービス残業規制の4.6通達が出て以降、管理が厳しくなってはいても、やっぱりサービス残業はある。
たとえば、自動車会社が開発期間を短縮しようと言うと、一次、二次の下請けにどんどんしわ寄せがいく構造がある。それを達成しないと、次の仕事がこないですから。
田尻 企業文化はあると思いますね。僕は会社が合併したんですが、定時過ぎるとどのセクションがどっちの会社から来た人かいっぺんにわかります。片方は定時過ぎると帰り始めますが、もう片方はずっと帰りませんから。
富永 僕も民間企業にいた時は参りました。定時になったんで仕事もないし帰ろうとしたら「君、何か勘違いしてるみたいだけど、定時になったからって帰るもんじゃないんだよ」ってさとされました。8時ぐらいまではいて仕事するのが当たり前なんだって。
古川 IT業界です。付き合い残業はほとんどありませんが、仕事が多くて残業せざるを得ないというのが現状です。それにお客様から、もっと遅い時間までサポートして欲しいという要望もかなり強いです。トラブルが起きたら解決するまで帰れないというのは重石さんと同じですね。
大越 さて、話題も出尽くしたようですので今日はこの辺で終了としたいと思います。皆さん、今日はお忙しい中本当にありがとうございました。


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