僕が「育児休暇」をとって思ったこと

KG

 ちょうど1年前の夏,”お母さんといっしょ”の【ひまわりとわたあめ】の曲に合わせて息子をおんぶして散歩していたっけ。トウモロコシ畑の真ん前でした。思い出すと今でも懐かしいです。

 僕は,夫婦の仕事の関係上から1年ほど前に【育児休暇】を取ったことがあります。いわゆる専業主婦ならぬ専業主夫というやつです。しかし家の仕事だけならまだしも,6ヶ月の乳飲み子と一緒に二人で過ごすとなると訳が違います。最初の1週間で,「うわ〜これはやばいことに首を突っ込んだものだっ。」と自分の境遇を憂う日が続きました。

 それまでの僕は育児を甘く見ていました。子どもが眠ってしまえば好きなことができる,と考えていたら大間違い。自分の事なんて何一つできません。子どもに向けなければいけないエネルギーは相当なものでした。

 でも月並みですが,子どもの笑顔を日々の糧に何とか乗り切った5ヶ月間でした。短かい5ヶ月の育児期間でしたが,その間いろんな事を考え,学ぶことができました。書物や映像の中では決して得ることのできない貴重な体験をしたような気がします。途中ノイローゼ気味になりながらも,それと引き替えに得た達成感は大きく,この子が大きくなったときに,少しは父親のことを自慢できるかな・・・,と考えています。

 以前ドイツ在住の主婦の方からメールが来て,育児観について話し合ったことがあります。曰く,「日本の男はなっとらん。ドイツの男を見習え!家を守るためなら仕事も投げ出して飛んでくるぞ!」と。家のことについては,男性女性の垣根がなく,家事洗濯も手の空いている方でするのが自然なのだそうです。日本もそんな感覚が広まれば,性差の問題も随分と無くなってくるのでしょうけど。また育児についても夫婦で対等に話ができるんでしょうけど・・・ほんとに羨ましい限りです。

 仕事によっては,「職務専念義務」というのがあるらしいですが,それを真似して,「育児専念義務」という法律なり条例を作ったらどうか,と冗談混じりに,しかし本気に考えたりしました。でも駄目でしょうねきっと。(笑)

 今は普通の仕事人に戻って,普通の生活を送っていますが,依然とはかなり違ったことがあります。まずなんと言っても,飲みに行かなくなった。(飲みに行けなくなったがより正確かな。)外にいても,何となく子どものことが気になって,手放しで遊べなくなってしまった。

 この感覚は,子を持つ親としては当然の気持ちなのかもしれません。が,ひょっとすると短い育児休暇での経験が,僕を少し変えてしまったのかもしれません。それが僕にとって良いことか悪いことかは考えたことはないですが,当分の間はこのままでいいのかなあ・・・,と思ってます。

 まあ大きな話になると,日本も父親が進んで育児に参加できる社会の条件整備ができるといいのですけど。合わせて,「戦後の女性は強くなった」とよく言われますけど,あれはあくまで男性側の主張であり,女性の目から見た日本社会というのは,まだまだ性差別の多い不合理な枠組みで成り立っているものだと思います。

 こういった社会の問題はなかなか解決のできない,時間のかかる仕事ですので,僕には荷が重いことですが,せめて自分の家族だけでも,性差的な垣根を取り払えれば・・・,と思います。そして息子が対等に話し合える年齢になったら,このことを話してあげたいと思ってます。(その時までこの事を覚えていたら,の話ですが。)

ということを,育児休暇の時に考えたのでした。まんざら無駄でもなかったようです。良かった,良かった。

(1999.8.17)
メッセージ

 はじめまして,育時連のみなさん。初の投稿になります。よろしくお願いいたします。
 私は現在3歳の息子を持つ,37歳の小学校教師です。つれ合いは保健の先生をしており,共働きで育児をしている毎日です。私は以前,育児休暇を取ったことがあり,そのことをHP上に載せているのですが,エッセイという形で投稿したいと思い,メールを差し上げました。
 男性が育児に参加することは,自然な形であり,男性の育児休暇も別段珍しいことだとは思いません。ただ,世の中がまだまだ男権社会の枠組みで成り立っているために,珍しく映ってしまうのかもしれません。男性の育児について,日頃考えていたことを,下記に短く載せますので,よろしくお願いいたします。雑文で申し訳ありません。また育時連のHPには遊びにきたいと思います。
 お仕事,頑張ってください。

(2000.10.29)

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