§1 男は忙しいから家事できない?? −男性の家事・育児を考える−
アンケート調査より
 3 調査結果  4. 家事・育児共有からの影響


 夫婦の間で家事・育児を共有している家庭とそうでない家庭には、どのような違いがあるのでしょう?いくつかの角度から検証してみました。

1. 現在の家事・育児共有状況をどう思っているか

 家事を一手に引き受けている女性は、現在の状況に満足しているのでしょうか。家事・育児を共有している男性は、積極的に共有しているのでしょうか。それとも諸般の事情からしかたなく家事・育児に関わっているのでしょうか。

 現在の家事・育児共有状況をどう思っているか尋ねた結果を、家事共有度の高い家庭(2.0以上)と低い家庭(0.2未満)に分けて検証してみます。

問7 あなたのご家庭の家事・育児の分担について、あなたの考えに最も近いものに○をつけて下さい。

あなたのご家庭の家事・育児の分担について、あなたの考えに最も近いものに○をつけて下さい

 家事共有度が高い家庭を見ると、男女共に過半数が「今のままでよい」と答えています。
男性の27.7%は「本当はもっと自分がやるようにしたい」と答え、「いまのままでよい」を合わせると80%以上が、現在の家事・育児へのかかわりを肯定的に捉えている事がわかります。
 女性の側を見ると、家事共有度が高いと言っても共有度の平均が3.5(5.0で等分)という状況を反映して、約1/4が「もっと配偶者にやってもらいたい」と考えています。

 家事責任を女性が担っている家庭では、男女によって回答傾向が大きく異なっています。
 女性の7割以上は「もっと配偶者にやってもらいたい」と考えており、「今のままでよい」と考えているのは約1/4です。この要望を受ける側の男性は半数が「今のままでよい」と現状維持を望んでおり、残りの半数が「本当はもっと自分がやるようにしたい」と考えています。

 この「現在家事はできていないが、本当はもっとやるようにしたいと思っている男性」の気持ちは、配偶者に伝わっているでしょうか。

問8 あなたの配偶者はあなたの家事の負担をどう思っているでしょうか。

あなたの配偶者はあなたの家事の負担をどう思っているでしょうか


 家事共有度が高い家庭では、男女共に半数が「今のままでよい」という現状維持の認識を共有しています。また、男性の27.7%が抱いている「もっと自分がやるようにしたい=妻の負担を少なくしたい」という気持ちは女性の16.7%には届いています。

 しかし、現在家事をほとんどしていない家庭では、男性の47.4%が抱いている「もっと自分がやるようにしたい」という気持ちが女性の15.4%にしか届いていません。57.7%の女性が「夫は現状維持を望んでいる」と感じています。このグループでは「配偶者がどう考えているかわからない」という回答率が高く、女性からは「何も考えていない」「一日中家にいるのだからできると思っている」等のコメントがつけられていました。

2. 家事・育児共有は少子化を救うか

 現在、厚生労働省は少子化対策の一環として「男性を含めた働き方の見直し」を提言しています。
 短時間労働と家事・育児の男女共有は少子化社会を救うのでしょうか。妻が40歳未満の家庭の回答を分析しました。

問13 あなたが生涯で欲しい理想的な子どもの数と、生涯に現実に持てると思う子どもの数は何人ですか。
あなたが生涯で欲しい理想的な子どもの数と、生涯に現実に持てると思う子どもの数は何人ですか


 理想的な子どもの数は2〜3人だけれど、現実には1〜2人しか持てないと考えていることがわかります。これは本調査回答者のうち、子どもがいる130人の現在の子ども数平均が1.6人である事実とも一致します。

 この「現実に持てると思う子どもの数」と関係を持ちそうな条件をいろいろと調べてみましたが、妻の就労時間、夫の就労時間、家事共有度、妻の就労状況のいずれとも、はっきりとした関係は確認できませんでした。つまり、「就労時間が短くなれば、子どもの数が増えそうだ」「家事・育児が男女で共有されれば、子どもの数が増えそうだ」「妻が家庭に入れば、子どもの数が増えそうだ」という傾向は見られませんでした。就労時間短縮はそれ自体当然望まれるところですが、今回の調査では就労時間の短縮や家庭での家事共有化が少子化対策として有効である事は確認できませんでした。

 ただし、今回の調査は既婚者のみが対象となっているため、就労時間の短縮や家庭での家事共有化が未婚者の婚姻動機を高める可能性については否定できません。

現実に持てると思う子どもの数


 その他の項目としては、現在子どもがいない人の場合、現在の夫の収入が700万以上の人は500万以下の人に比べて「現実に持てると思う子どもの数」は多くなります(1.9人と1.3人)。が、現在子どもがいる人にはこの傾向は見られません。予想と現実は違うということでしょうか。
 また、現在子どもがいる人の場合「結婚前に家事・育児分担についてある程度以上話し合った」人の方が話し合わなかった人より「現実に持てると思う子どもの数」が多くなる傾向がありますが(2.3人と2.0人)、現在子どもがいない人の場合は逆の傾向が見られ、一致していません。
 これら二条件とも、子どもがいる回答者の実際の子どもの人数とは関係が見られず、本質的な条件ではないと思われます。

3. 「二人で子育て」の理想と現実

 今回の調査では、子どもが小学校にあがるまでの育児について、子どもがいる人には現実の育児共有の状況を、いない人にはどういうやり方が望ましいかを答えてもらい、各回答者の育児共有度を算出しました。
 その結果、子どもがいない家庭の育児共有度は3.4で、「夫も子育てにかかわることが望ましい」という意識は比較的強いことが分かりました。しかし、実際に子どもを持った上での育児共有度は2.3に下がります。
 男性は、子どもがいない状態で思い描いていたほど子育てに関われていません。

 妻の就労状況で分けてみると、『妻常勤家庭』では子どもがいない人と現在子どもがいる人の間に育児共有度の落ち込みがほとんどないのに対し、『妻その他家庭』『妻専業主婦家庭』では子どもへのかかわりがずいぶん落ち込んでいるのがわかります。
 『妻常勤家庭』の男性が子育てにかかわり続けやすい理由としては、日常生活に父親育児参加の必要性が高いこと、保育園や祖父母等「母親以外の人による保育」が日常的におこなわれる事で母子カプセル化が防止され、父親が育児参加しやすい雰囲気が作られること、などが考えられます。

問3 あなたのご家庭では、小学校にあがるまでのお子さんに対して次の育児の分担をどのようにしていますか?(あるいはしていましたか?)お子さんがいらっしゃらない場合は、誰が行うことが望ましいと思うか、をお答え下さい。

育児の分担をどのようにしていますか


 夫の育児不参加は、次の「女性の家事・育児共有状況への満足度」を押し下げる大きな要因となっています。

4. 家事・育児共有状況への満足度

 スマイルマークを使って、現在の家事・育児共有状況にどの程度満足しているかを表現してもらいました。最も不満を0、普通を3、最も満足を6とすると、満足度の平均値は女性が3.6、男性が4.1で、男性より女性の方が家事・育児共有状況に不満があることがわかりました。

 この満足度と関係を持ちそうな条件をいろいろと検討したところ、家事・育児共有度が高いほど女性の満足度は高くなることが分かりました。その他、妻の就労時間、妻の収入、夫の就労時間、結婚前の話し合いなどとも関係が見られましたが、これらは家事・育児共有度と関係が深いため、これらの条件により家事・育児共有度が変動し、それによって満足度が上下するものと思われます。

 家事・育児共有度の高低で上位群と下位群に分けて満足度の違いを調べてみたところ、家事・育児共有度が低い家庭では男女差が大きく、女性の満足度が低くなっています。特に夫が育児に協力的でないと、妻の満足度が大きく低下します。
 これに比べ共有度が高い家庭では、家事・育児とも女性の満足度が男性より高くなる一方で、男性の満足度は共有度が低い家庭とあまり変化がなく、結果的に男女差は縮小します。

問12 夫婦間の家事や育児の分担状況について、あなたの毎日の気持ちを一番よく表しているものを選んで番号に○をつけて下さい。

満足度


 共有度が低い家庭では男性が妻の不満の心を十分に汲み取れない結果男女間に格差が生じ(自分だけが満足)、共有度が高い家庭では話し合い等を通じて互いの満足度が同じぐらいに調整されている可能性があります。また、家事・育児共有が増えても男性の満足度が大きく変わらない理由としては、妻の満足が家庭を平和にし夫にも満足を与える結果、共有による夫の不満を相殺するという心理効果や、育児は負担だけれども楽しみでもあるなどの理由が考えられます。

 また、性別役割規範(問14 ア〜エ・ク〜ケ)が強い女性(=家事・育児は女の仕事だと考える女性)は、現在の家事・育児共有状況に不満が少ない事がわかりました。家事・育児の共有度が低い現実の前では、「家事・育児は女の仕事。私がするのは当たり前」と考える女性の方がストレスが少なく、「女だから家事をするというのはおかしい」と考える女性のストレスが高くなるのは当然のことといえるでしょう。

女性の性別役割規範と満足度


5. 妻が働きに出られない理由と家事・育児の関係は?

 「そのうち仕事に就きたい」または「すぐにでも仕事に就きたい」と思っている無職の女性に、「仕事に就けない理由」を複数回答してもらいました。就職が難しい現在の状況においても、一番の問題に「子どもの世話」があげられています。勤務時間や求人条件、職種などの社会的要因とともに、家庭における家事・育児共有という家庭内的要因が女性の就労には大変重要である事がわかります。

問21-e 仕事に就くにあたって問題となることはありますか。あてはまるものをすべてに○をつけてください。(妻の回答のみ、複数回答可)

仕事に就くにあたって問題となることはありますか


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